ある日ぽっちゃり猫を助けたら
よその世界の執事の主になった
これは 私と執事たちのお話
きょとんとしているミヤジを
ミヤジの足元でごろんと寝返りを打って見上げれば
髪を降ろしていつもよりお色気お兄さんのミヤジが
不思議そうに首を傾げる。
しっかりミヤジのベッドに張り付いて・・・いや、
看病していたフルーレとラトが
ミヤジと同じように首を傾げて仲良しだなと思った。
にこりと笑顔のまま首根っこを掴まれて
ぽいっと椅子に戻される。
座り直してベッドに向き直れば
上からのしりとラトが乗ってきて
鼻と鼻が触れる距離で
さらりとピンク色の髪が視界に流れた。
けろりと悪びれないラトに
フルーレがキャンキャンと子犬のように説教して
いつものデビルズパレスだなぁと小さく笑う。
そろそろお父さんのストップが入るかな、と
ミヤジをみれば、ぱちりと目があった。
主パワーだ
私すごいな?
言いづらそうなミヤジに首を傾げて
服の下から覗く包帯にふと視線が留まる。
そういえば緊急で無理やり塞いだだけだから
きちんと治ってなかったのか。
ん、と考えて
よいしょ、とミヤジのベッドに乗った。
鳩尾より少し上、
包帯を少し引っ張れば
ぼこりと不自然に凸凹の薄い皮膚がある。
痛くないかな、と指で触って
顔を落とした。
そーっと痛くないように慎重に舐める。
上でミヤジが息を呑んだ気配がして
痛かったかな、と目を向ければ
きゅっと眉を寄せたミヤジに
真っ赤な顔で頭を押さえられた。
ぺろ、と傷口を舐め
そろそろどうかな、と見やれば
ボコボコしていた皮膚がつるりとしたものに戻り
ミヤジの褐色肌の筋肉質な体になる。
ミヤジの傷の治り具合に
いい仕事したな!と達成感に体を起こせば
ぷくりと頬を膨らませたラトが横に立った。
確かに全身実験をされていて
痛々しい包帯があちこちあるラトは
にこりと笑って包帯を外し始めた。
はだけたままじりじり迫ってくるラトに
悪寒を感じてサッとミヤジの後ろに隠れる。
横の3階の医務室の窓から
カサリと音がした気がしてふと振り向いた。
両手に枝を持ち
目から血の涙を流している変態がいた。
ハウレスが鼻から血を出すのはもう自然なんだな
心から不思議そうなラトに
鬼泣きのハウレスがゆらりと窓を跨いで入ってきて
石から戻ったフルーレが青い顔ながらも
サッと私とミヤジの前に立った。
・・・・・・・・
普通負けたほうが怪我するんじゃないのか?
嵐のように突入して
嵐のように去っていったハウレスに
遠くのほうでフェネスの悲鳴が聞こえる。
ドカンパリンと、
今はグロバナー邸に行っていて不在のベリアンが聞いたら
速攻雷が落ちそうな音にそっと窓を閉じた。
ベッドの上で体を起こしているミヤジが
一度深呼吸をして、
泣きそうな、嬉しそうな、
不思議な笑顔を浮かべた。
腕を引かれてミヤジの手が背中にまわる。
私の胸元に顔を伏せたミヤジが
息を吐き出すように呟いた。
今だけ少し見下ろす頭にべしんとチョップして
顔をあげたミヤジに首を傾げる。
今悪魔化してて耳が生えてたら
思いっきりワシャワシャするのに・・すごく残念だ。
詳しくは知らないけども。
誰かの命を犠牲にして生かしたって
ルカスと喧嘩してたじゃないか。
まさか忘れてないよな?と問えば
は・・・と、息を吐いてミヤジが頷く。
うむ、
大人になっても素直に反省出来るのは良いことだ。
少し強まった腕の力に
よしよし、と頭を撫でれば
顔をあげたミヤジが不意に耳元に顔を寄せた。
━━━━ありがとう あなた
耳に触れた低音にぞわっと鳥肌がたって
ミヤジの顔を押しのければ
ぐっと引っ張られてミヤジが私ごと後ろに倒れた。
私をお腹に乗っけたまま笑っているミヤジに
これ、ルカスが見たら
怒られるの私だな、と体を起こせば
ドアが開く音より先にバキッと何かが壊れる音がした。
ユーハン、
なんで疑問形ではなく断定なんだ
壊れたドアノブを横に置いたユーハンに
ぐいっと持ち上げられて横抱きにされる。
肩に担ぐでもなくこども抱っこでもない持ち方に
おぉ・・と声を上げた。
ミヤジに念押しして、
ユーハンとベリアンのところへ行けば
ベリアンからラトの件からここ数日の経過報告を受けた。
サルディス家の人体実験や実情を
フィンレイから公表し、東の大地は
反サルディス家の複数の組織からなる
イースト諸侯同盟連合の貴族たちが治めていくこと。
そして、
中央の大地に輸送する途中でフブキが逃走し
行方知れずとなっていること。
え、だって見るからに
貴族のワガママ坊っちゃんぽかっただろ?
自分の計画崩されたら挫折するかなと思ってたぞ。
静かなユーハンを見上げれば
ふぅ、と息を吐いたあと
ゆっくり顔をあげてベリアンを見た。
急にユーハンがこちらを見て
目をぱちくりすれば
きゅっと手を取られる。
ぐいっと引かれて
ミヤジとは反対の耳元にユーハンの口が触れる。
晴れ晴れとしたユーハンの笑顔と
その後ろで、
目をキラッキラさせてるムーが印象的だった。
ミヤジとユーハンと。
主様に他意はありません。獣耳ならともかく・・。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!