ある日ぽっちゃり猫を助けたら
よその世界の執事の主になった
これは 私と執事たちのお話
ベリアンから話を聞いた翌日、
ルカスとふたりでグロバナー本邸に来た。
今回の件でルカス、フィンレイ双方から
しっかり話をしたいとのことだったので
いつもの会議室には私たちだけだ。
最近忙しくてジジイ共と遊んでないが
あいつらそろそろポックリ逝ってないだろうか。
今度花火を入れたびっくり箱とか送ってみようか
フィンレイが微妙な顔をしてるので
半分しか本気じゃないよ、とちゃんと訂正すれば
苦笑しているルカスが私に椅子を引いた。
椅子に座るなりルカスとフィンレイから
今回の計画について改めて説明される。
サルディス家が悪魔執事を超える存在を作ろうと
災禍の監獄でこどもたちに人体実験をしていたこと。
戦争に発展しないよう敢えてラトを引き渡し
悪魔化させて監獄を潰そうとしたこと。
その計画が失敗しないよう、
私たちに、ミヤジに偽の情報を伝えたこと。
ひと通り話したルカスは
目を伏せてふ、と息を吐いた。
はぁ、とため息をついてルカスを呼んで
私よりずっと大きい体を縮こませているルカスを
下から覗き込んで首を傾げた。
正確にはミヤジ何か企んでるなーくらいだったけど
ルカスとフィンレイが最善だと思ったのなら
結果的にラトも無事だったんだから
ぐだぐだと文句をいうのは時間の無駄だしな。
それに、だ。
なんかもごもごしてたので
イラッとして一発ビンタをお見舞いする。
おいフィンレイ、そっぽ向いてるけど
笑ってるのバレてるからな?
がしっとルカスの服を掴んで
もう一度目を合わせた。
今度はしっかり返事をしたルカスに
よし、と拳をおろせば
隠れて笑っていたフィンレイがごほんと咳払いした。
フィンレイの話が終わり、
一礼したルカスが先に馬車を手配しに行く。
ふたりきりになった時点でフィンレイを見上げた。
眉をあげたフィンレイに首を傾げる。
どこそこのスパイが邸に侵入して
他の執事やラトに気付かれないように
着替えや風呂を覗くなんて出来るのだろうか。
同じ執事ならともかく。
もちろんデビルズパレスに
執事たち以外の人間だって行き来はする。
立ち入り禁止のわけではないし
なんなら総出の依頼があれば
邸の警備にきてくれる顔馴染みの衛兵だっている。
頭を駆け巡る邸の関係者に
一度目を閉じて頭を捻った。
いまここで考えたって答えはでない。
間髪入れずに返ってきた言葉に
おや、と目を丸くする。
なんだフィンレイ
最近会ってなかったからデレ期か?
あんまり真面目だとハゲるぞ
肩を竦めるフィンレイをジト目で見上げて
廊下から響いてくるルカスの足音に踵を返す。
ドアのところでそうだ、と
フィンレイに振り返ってにこりと笑った。
また報告書書くのめんどくさい
馬車に揺られて少し、
遠くのほうにデビルズパレスの屋根の先が見えてきて
いつもの笑顔のルカスを見上げる。
いつもの笑顔、に見えるけども・・・・
時間が経てば経つほど
にげる言い訳探しそうだしな、ルカス。
視線が定まらないルカスに
返事は?と声のトーンを低くすれば
3拍くらいおいて、はいと返ってきた。
そのへんの返事の速さは
ハウレスやテディを見習ってくれ
あいつら反射で返事するからな
目に、ちょっと見に行きたいと
書いてあるムーに一応釘を差して
地下への階段を降りる。
帰ってきた報告をしに
ベリアンを探しているのだが
いつもの1階にはいなくて
ベリアンがよくいる、
地下倉庫まで降りてきたわけなのだが・・・・
コンコンとノックしても返事はなく
開いたドアから覗いても部屋に人の気配はない。
どこに行ったんだろうと首を傾げれば
ムーがガシッと私の腕を掴んだ。
そんな期待した瞳で見られても困るんだが・・・
わくわくしているムーと
廊下の様子を確認してそっと部屋に入る。
・・・・ふむ?
中身は興味ないし
なぜかホッとしたようなムーに
一度床から立ち上がって本棚を見る。
その中から分厚い本をいくつか手に取れば
そのうちの2冊の本は見た目より軽かった。
本には、2本の鍵。
別に残念ではないぞ
ちょっとがっかりしただけだ・・・・
鍵なんて興味ないので帰ろうかな、と手を上げかけて
廊下から近づいてくるベリアンの足音に顔をあげる。
まだ地下組の部屋のほうだな?
ムーがサッと部屋から出て、
少し離れたところでベリアンを呼ぶ声がする。
念の為大きな棚の横に隠れていると
徐々にベリアンとムーの話し声が遠ざかり
部屋の外が静寂に包まれる。
そろそろいいか、と
棚に手をついて立ち上がった時だった。
がこんと棚がずれて、
壁ではなく鉄の縁が見えた。
このドアの先に隠している本って
相当やばいのではないか?
帰るときは絶対痕跡を残さずにしようと
鍵を使ってドアを開ける。
ギィと重い音をたてて開いた先は、
灯りが何もない暗闇。
しばらく目を凝らせば
そこは小さな部屋で、
何かが椅子に腰掛けているのが見えた。
黒髪に、ベリアンみたいに
一部だけ緑色のメッシュが入った男の人。
黒髪に黒い獣耳と、
長い尻尾も生えている。
じいっと見ても
瞬きもしない人に手を伸ばしてみた。
━━━━ 結論
ベリアンは変な本は隠してませんでした。
(はっ!これが男が欲しがるドールか!)
(・・・・・・・・・・・)
(・・ってムーいないからツッコミいないわ!)
だんだんムーに毒されてく主様。
主様とムーがわくわくしてる同時刻
ルカスはミヤジに告白してます、たぶん。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。