第2話

気になる横顔
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2025/07/14 10:09 更新
(なな視点)

昼休み。
私は机にあごを乗せて、ぼんやりと隣の子を見ていた。

隣の成瀬ほのかちゃんは、今日も静かだった。
水色のセーター。落ち着いた表情。
それなのに、目線だけは時々ふわっと遠くへ向かう。

「……購買、行った?」
「行ってない。混んでるでしょ」
「たしかに。……私、今日なぜかプリンだけ持ってきた」
「変な構成」

くすりと笑うその顔に、ちょっと救われる。
まだ“友達”って感じじゃないけど、こうして少しずつ話せるようになってきたのが、嬉しかった。

そのとき。
教室の後ろのドアが、少しだけ音を立てて開いた。

「あれ……」

私はつぶやいて、顔を上げる。
入ってきたのは、たしか斜め後ろの男子――桐島 蓮くん。
教室でも静かな方で、特に誰と仲がいいとかも聞いたことがない。

「……鍵、落ちてたよ」

その声は小さくて、誰に言ってるのか一瞬わからなかった。

でも、その視線の先が成瀬ほのかちゃんだったと、すぐ気づいた。

「あ、……ありがとう」

ほのかちゃんは静かに答え、鍵を受け取った。
桐島くんは無言でうなずいて、何も言わずに席へ戻っていった。

その間、たった10秒。
でも私には、なんかすごく長く感じた。

「……知り合い?」
気づいたら、私はそう聞いていた。
ほんのちょっとだけ、無意識に。

ほのかちゃんは、首を横に振った。
「ううん。名前しか知らない。……でも、なんとなく前にも話した気がする」

「え?」

「……前の学校で、たまに、似た空気の子がいたから」
とても曖昧な答えだった。
でもその横顔が、なぜかいつもよりちょっとだけ遠く見えた。

私は、ほのかちゃんのことをもっと知りたいって思った。
けど今の私は、彼女の過去も、視線の先も、ぜんぜん見えていない。

——そのとき私は、まだ知らなかった。

この数秒の出来事が、
私の“普通の春”を変えてしまうことになるなんて。

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