第10話

旋律が十人
65
2023/12/31 16:16
彼女の名前を呼ぶことしかできない自分が不甲斐なく思うが、今はあなたが起きるまで手を握っていよう。
ここ…どこだろう。
さっきまでステージのセカイにいたはずなのに…
さっきまでステージのセカイにいたはずなのに…
それに、視界に靄がかかったみたいだし体の自由も効かない。
あなた
声を出そうとしても何かが喉につっかかって声にならなかった。
まだ動かない体をよそに目に映る景色を見ているとそこは病室のようだった。
暫くぼーっとしながら思考しているとようやく体が動いた。
どうやら私は、誰かの記憶を追体験しているようだ。

さらりと流れる髪、細い腕に点滴。
どうやらこの体の主は女性の患者らしい。
ふと点滴に目を向けると視界がうるんではらりと涙がこぼれた。
なんで泣いているのか私にはよくわからなかった。
ぽろぽろと流れる涙はとどまる事を知らずに布団を濡らし続ける。
そんな時間を過ごしていると急に扉が開いて少し背の高い男性が入ってきて、女性に駆け寄った。
少し驚いたがなぜか男性は私を抱きしめると
???
あなた!
と泣きながら名前を呼んだ。
私の…名前…なんで知ってるんだろう。
取り乱した男性を前にしても体の主は驚かずに
____________?
と何かを訪ねた。
今なんて言ったんだろうと思っていると急に視界に砂嵐がかかり何もなくなってしまった。
周りは真っ暗になり、なぜかふわふわと何かが浮いている。
あなた
あれは…
いつの間にか声ははっきりと出せるようになっていて、体も元に戻っている。
ふよふよ浮遊している物体に目を凝らすと、

それはパンケーキだった。

あなた
…なんでパンケーキが浮いてるの。
じーっとパンケーキと睨めっこしているとなんだか懐かしいなと思えてしまった。
段々視界にかかった霧が晴れていく。
🎤レン
…あなた、おはよう。体調はどう?
あなた
レンくん…おはよう、体調はもう大丈夫。
少しぼやけた目で一点を見つめているとレンくんがぎゅっと手を握ってくれる。
🎤レン
うん、それならよかった……夢
不意に名前を呼ばれ"へ?"と変な声が出る。
それに加えてレンくんの手が顔に伸びてくる
🎤レン
無理しすぎ。
と言いながらレンくんは私の頬を軽く引っ張る。
あなた
はひ、わかりまひは…
と返事をする。
そしてそれに続けて、
🎤レン
あと僕のことはレンでいいから!
と言った。
なぜかそっぽを向いてしまったけど、耳は真っ赤に染まっていた。

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