※ 実父 シリル ・ マーカス
↓
マッシュ ・ マーカス
ざわざわ と窓際に人が集まっている事を横目に僕はフィン君と一緒に帰宅の準備をする。
でも、フィン君も外が気になる様で、背を伸ばしたりしながら窓の外を見ようと頑張ってた。
既に背の高い人とかが窓に集まりすぎてるからか、ジャンプしてもちょっとしか見えない様で、フィン君は しょんぼり と顔を伏せる。
ばっと勢いよくフィン君は顔を僕に向けた。どうやら元気が出たようだ。
少したわいもない話をしながら僕とフィン君は下駄箱に向かい、靴を履き替える。
と、フィン君が指差した方向を見れば校舎の入口付近には人が溜まってた。
その中に少し見覚えのある紫色の帽子がチラリと見える。
と、話していたら急に僕を呼び止める声が聞こえたからその声がした方向を振り返る。
下駄箱にはえっと、確か歴史担当の先生…オーター、さんだっけ。
その人が僕を手招きする様に立っていた。
何か兄さんが悪い事をしたのかな と頭の中で考える。あそこに立っているのは間違いなく何かと人に迷惑かける二番目の兄さんだから、そんな事も有り得ると納得してしまう。
確かに…凄い人集りだ…と兄さんが居るであろう方向を向く。
教室の中でも結構な人が窓際に集まっていたんだから確かにこのままでは危ないかも…。
そして下駄箱まで来る途中の他生徒の会話を思い出す。確か「俺もトランプ持ってこようかな」とか「僕も出来るようになりてぇー!」とか…言ってたような…言ってなかったような…。
と、フィン君の提案により、僕とオーター先生、フィン君と一緒に人集りの原因となっている兄さんの元へと行く事になってしまった。
とても嫌な予感がするのは、気のせいかな
と、人集りの間を通ってひょこりと顔を出し、名を呼ぶ。
予想通り、そこには暇だったのかトランプをバラバラと器用に手の中で自在に操るファーミン兄さんの姿が…。
多分、人集りの原因はファーミン兄さんが暇でやっていたトランプ遊びだろう。兄さんこう見えて職業 道化師だから…。
僕は家で見慣れてるけど普通の人は見慣れていないようで一つの技が終わる度に おー と声が上がっていた。
兄さんは僕を見つけるな否やぎゅうっと僕の体を自身の方へと手繰り寄せ、抱きつく。
うっ と小さい呻き声を上げてしまった。
前世の記憶…そういえば兄さん達が言ってたっけ。「いいなぁ、前世の記憶」って前に呟いた事があったけど兄さん達から全力で止められた事を覚えてる。「思い出さなくて良い」とか「逆に思い出したら大変な事にならねぇ?」とか「思い出したら監禁する」とか…言われたっけ。
グイッと服の袖を先生に引っ張られる。それに対抗してか兄さんの抱きつく力も少し強くなった。
流石のフィン君でもこの状況になってしまった僕に助け舟を出す事は出来ない様だ。
仕方なく、身を任せる事にした。
その後、ドゥウム兄さんとワース君が来て二人が大人しくなるのはまた別のお話。
𝑒𝑛𝑑 _ 。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。