リヴァイs.
集合命令が出たのは、いつも通りだった。
訓練後の中途半端な時間。
全員が揃う広場。
空気も、顔ぶれも、何も変わらない。
あなたは俺の少し後ろに立っている。
エルヴィンが前に出た。
背筋の伸びた姿勢。
いつもの冷静な声。
その言い方に、違和感はなかった。
“私事”という言葉を、あの男が使うことすら。
空気が止まる。
誰かが、冗談だと思ったのが分かった。
ざわつきは起きない。
理解が追いついていないだけだ。
次の言葉が来る前に、俺は無意識にあなたを見た。
彼女は――
固まっていた。
顔色が、ゆっくり抜けていく。
嫌な予感が、背骨を這い上がる。
一瞬で、世界がひっくり返った。
調査兵団の連中が、完全に混乱している。
さっきまで公認の恋人だった俺達を、何度も見比べる。
俺は、何も言えなかった。
思考が、遅れてやってくる。
あなた。
婚約。
エルヴィン。
繋がらない。
エルヴィンは続ける。
淡々と。
容赦なく。
その瞬間、
あなたの身体が、ほんの少し揺れた。
俺は、反射的に一歩前に出る。
だが、言葉が出ない。
エルヴィンは、俺を見た。
初めて、視線が真正面からぶつかる。
胸の奥が、冷たくなる。
世界が、俺のものを奪っていく音がした。
あなたは、俺を見なかった。
見られなかったんだと思う。
選ぶ余地も、
拒む時間も、
与えられていない顔だった。
エルヴィンは、そう言って話を終えた。
誰も、動けない。
俺は、拳を握りしめる。
――世界より、お前を選びたかった。
だが、世界が先に、彼女を選んだ。
















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!