第11話

第6区間〈学力〉
1,701
2019/03/18 11:54
樹神 響
蓮水?は頭良いのか?
蓮水の番が始まったやいなや、響が聞いてくる。
正直な印象だと“The・普通”だ。
学力でも運動でも常に平均をキープしている。
見た目でまぁまぁ目立っていたけど、能力的な問題になると絶対に目立たないと思う。
終夜 渚紗
普通、かなぁ…。
樹神 響
普通でどうにかなればいいけど…。このゲームなら、平均とかだと絶対に生き残れないぞ?
終夜 渚紗
分かってるけど、みんなが違うの選んで本人も大丈夫って言ってたから…
樹神 響
まぁ、アイツの無事を祈ろう。
終夜 渚紗
うん…。
正直、心配でたまらない。
蓮水に死なれたら私まで死んでしまう。
でも、その謎の自信を信じるしか私には出来ない。
絶対に死なないでよね…。
そう心から願った。
蓮水が走って行くと、フェンスが待ち構えていた。
フェンスの横には台があり、台にはパネルが埋め込まれている。そして、モニターには台が見えるように映し出されている。
蓮水が台まで辿りついたところでパネルに文が表示された。
「次の問いに答えなさい。10問中8問以上正解すれば先に進めます。間違う度に指を1本ずつ切り落とします。尚、問題の取替えは2回まで、解答時間は各10秒、ノルマを達成出来なかった場合は最初からやり直してもらいます。」
蓮水 黎
へぇ…指が無くなるのか…。
蓮水が棒読みでそう言うと、迷うことなくスタートと書かれたボタンを押した。
パッと画面が切り替わり、表れたのは…
「Q1、ブロックが何個あるのか数えなさい」
「1、145個 2、144個 3、146個」
立体が沢山積まれている図形。パッと見じゃこんなの解けようがない。
正解は3分の1が蓮水の運が良ければ生き残れる。
終夜 渚紗
蓮水!3分の1の確率だから!
蓮水 黎
3分の1?こんな問題、運に任せる必要なんてない。答えは1の145個。
「1、145個」を押した蓮水。
そのパネルには「正解」と表示されていた。
そのことに喜ぶことも無く、次の問題を始める。
「正解」「正解」「正解」「正解」「正解」……
3択問題、記述問題、計算問題。
絶対に解けないような問題をスラスラと解き進めていく。「不正解」がパネルに表示されない。
樹神 響
何だ、頭良いじゃねぇか。
東雲 洸平
これなら、余裕そうだな。
終夜 渚紗
嘘…。
いつもテストはほぼ平均点。
パッと目立つこともなかった。
もしかして、学校でかなり手を抜いていた…?
理解出来ない私を置いて、8連続で正解した蓮水がフェンスのドアを押して、前に進む。
進んだ先には、大きな門と台。
台の手前の机には紙と鉛筆が置かれていた。
そして、門には1つの問題が書かれている。
「もし、この世に摩擦がなければどうなるかを答えなさい。解答する際には紙を台の上に置くこと。また、時間制限は無しとする。」
蓮水 黎
摩擦が無ければ…
鉛筆を片手に蓮水が悩み出す。
すると、蓮水に追いついたチームの子が…
女子
あれだよ!きっと、摩擦がないと物が永遠に転がっていく!!
紙に答えを書いて、台の上に紙を置く。
しかし、門は開かない。
「何で?」と言う声が聞こえ、合ってると思い込んでいたチームの子も騒ぎ出した。
巫 悠真
………あ!僕、分かっちゃった!
東雲 洸平
え、マジかよ。
巫 悠真
ほんとほんと!多分だけどね?
聖 瑠奈
私、全然分からないよ〜…
巫 悠真
ヒントはねー、今の女子の言ったことも十分な答えに繋がるヒントになってることかな。
蓮水 黎
摩擦が無いと物が永遠に転がる…この世に摩擦がないとどうなるかを答えなさい………あ。
巫に言われ、女子が言ったことを復唱した蓮水が何かに気付いた様子。
そして、口元を緩ませ鉛筆を机に置いた。
樹神 響
…あぁ、何だ。そういうことか。
終夜 渚紗
何が?てか、答え書かないの?
蓮水 黎
最初から答えを書く必要が無かった。しっかりと問題読めば良かっただけ。
そう言い、蓮水が白紙のまま台に紙を置いた。
すると……まさかの門が開いたのだ。
2つ目の障害物を抜けた蓮水を見て、響が交代地点へと向かう。
私達は蓮水について行くようにコースの外を走ったが、私は未だに問題の答えが分からない。
終夜 渚紗
ねぇ、あの問題ってどういうこと?
巫 悠真
んっとね、まず問題は「どうなるかを答えなさい」でしょ?
終夜 渚紗
うん。
巫 悠真
つまり、紙に答えを書けなんて一言も言ってないんだよ。
終夜 渚紗
じゃあ、どうやって答えたの?
巫 悠真
摩擦がないと物が永遠に滑る。もし、この世に摩擦が無い状態で鉛筆で紙に何かを書こうとしたらどうなる?
終夜 渚紗
…………あっ!!
巫 悠真
分かった?
終夜 渚紗
分かった!だから、白紙で出してそれが正解だったってことなんだ!
巫 悠真
そゆこと〜!
摩擦がないと物が滑る。
つまり、鉛筆で紙に何かを書くことは出来ない。
それが答え。
だから、蓮水は書くことが出来ないから、何も書かないで台に紙を置いたってことだったんだ。
蓮水、頭良すぎでしょ…
心の中でそんなことを呟く。
蓮水が交代地点に着き、響にハイタッチをする。
蓮水 黎
……。
樹神 響
何か言ってくれてもいいだろ?
蓮水 黎
……頑張ってくれ。
樹神 響
はいよ。
半ば、苦笑いを浮かべていたが蓮水の声援が届いたところで響は前へと走り出した。
第6区間〈学力〉蓮水 黎 クリア

第7区間〈力、技術〉樹神 響

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