蓮水と手分けをして安否確認が取れるだけ取って一番最後の澪織に。
今のところ、不明なのは神々と徹弥。
まぁ、同じ県にいるからどうにかなると思う。
澪織の連絡先を選択して電話をかける。
少しの間呼出音が続いた後、電話が繋がった。
『東奔西走隠れ鬼』
全国の高校生から逃げながら、新しいペアの人と組んで、終了まで逃げ切ってください。
〈ルール〉
・全国の高校生から逃げる
・手を掴まれたら捕まったことになる
・逃げる中で21ゲームに参加していた中で新しくペアになる人を探して握手する
・生き残りの人数が偶数になって全員にペア相手が出来たら終了
〈注意事項〉
・原則、進行役は参加不可
・ペアになってからは今まで同様、片方が死ねばもう片方も死ぬこととする
・乗り物等の使用は自由
ー 兵庫 ー
僕は何となくの予知はしてたから、起きた瞬間に先生に早退を告げて帰っていた。
血の繋がった家族のいない家には僕だけでお父さんはどうやら仕事に行っているみたい。
ぼんやりと僕達に協力的だったダイヤの響ちゃんと悠真君の影を見ながら僕はメモを取ると、みんなの位置を書き出した。
東京→(黎君、渚紗ちゃん)(陽向君、海凪ちゃん)澪織ちゃん
静岡→綾翔君
愛知→徹弥君、竜二君
兵庫→僕
愛媛→優花ちゃん
福岡→徠斗君 (ペアになりそうなところ?)
僕が行くのは愛知か福岡…両方、人が多いけどそれは避けられないこと…
愛媛に孤立して残ってる優花ちゃんのことも考えると僕が行くべきは愛知だね。
荷物を手に取って、帽子を深く被って外へ。
サボり癖のある高校生達が歩き回っていて少し背筋を冷やしながら新神戸駅に向かっていると持っていた携帯電話に電話がかかってきた。
その相手をしっかりと見てから僕は電話に出る。
言い残して、切られた電話。
僕はホーム画面を見て、微笑むと画面を暗くしてポケットにしまった。
やっぱり、黎君は黎君だ。
昔と違って今は無愛想で無感情なことが多いように見えるけど、昔と変わって変わらない。
誰よりも優しくて、他人のことを思っている。
自分が勝つことだけじゃなく、他の人の勝ちまでも考えてくれる。
僕はそう呟くと、新神戸駅へと足を速めた。
あの意味不明なゲームなら何でもありなんだから、常に最悪の場合を想定しないといけない。
せめて、もう少しだけでいいから生きたい。
死ぬ前に一度でいいからあの頃みたいに黎君と話してから死にたい。
いきなり2人とも消えて何も話せないのは…嫌だ。
ごもっともな意見に私は黙る。
横目で蓮水を見ると、私の少し戸惑った様子に気が付いたのか怪訝そうな表情見せる。
蓮水に話しても何にもならない。
これでもし相手が高校生だったらそのときはまぁ、何とかなるだろう。
人が多いのはあまり好ましくないけど、安否確認の方が優先だ。
そういう結論に辿り着いた私達は電車に向かう。
何人か午前授業だったと思われる高校生がいたが、私達の顔を知らないらしく何とも思ってない様子。
これなら案外簡単にクリア出来るかもしれない。
そんなことを思い、私達は電車に乗り込んだ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!