数年後...
今日は、僕らが付き合い始めた日。
そんな日を、さとみくんは覚えていてくれて、
今日の朝突然、
「 夜、ここのホテルのレストランで待ち合わせな 」
と言い、仕事に向かってしまった。
見せられたのは、めちゃくちゃ高級なホテルのレストランで、
コース料理を食べると、何十万というお金が飛んでしまう。
高すぎる値段に胃がきゅっとなりながら、さとみくんを待っていた。
というか、早く来すぎた。
遊園地で、デートした日のことが思い浮かぶ。
少しだけ、胃の束縛感が抜けた気がした。
と、ため息をひとつ。
すると、
額に少しだけ汗を滲ませながら、ジャケットを脱いで来た。
らしくもなく、こんなことを思ってしまう。
今日が特別な日だからだ、たぶん。
一旦、腕時計を確認する。
どうしよう。
まだまだ、始まったばかりなのに、
もう、胸がいっぱいだ。
なんて、他愛のない会話を交わして。
実は内心、めちゃくちゃに赤くなっていたりする。
忙しなく動くウェイターさんの両腕に、二つの前菜のようなものがあった。
こういうコース料理は一品一品が少量で、
今回の前菜であるサラダも、ちょこんとサラダが、大ぶりな皿にのってあるだけだった。
恐る恐る、口に入れた。
さすがは一流ホテル。
緊張していても、味はしっかりとわかった。
その後も、たくさん料理が運ばれてきて、
種類が多かったため、お腹はいっぱいになった。
さっきから、なんだかさとみくんが、そわそわしてる。
おかしいなぁ、、と思いつつ、
さとみくんが、お金を払う姿を見つめていた。
帰り道。
車で帰っていたところ、
と、急に言い出した。
家へ向かう方向とは真逆で、
最近評判の、絶景スポットがある方向。
すごく今更だけれど、
運転する姿、いつになってもドキドキしてしまう。
高校を卒業したあたりからさとみくんは、遠出できるようにと運転免許をとってくれた。
運転する彼の姿を見るまでは、運転する彼氏がかっこいいなんて、幻だろうと思っていた。
けれど、実際隣に座ってみると...、めちゃくちゃかっこいい。
窓から景色が溢れ出るほどの絶景。
東京の街並みを、ただただ見下ろすだけだけれど、
なぜか特別に見える。
吸い寄せられるように、手すりをつかんだ。
あのビルも、あのタワーも。
あの公園も、あの駅も。
全てが、ミニチュアみたいに小さく見える。
らしくもなく、はしゃいでしまった。
また、ソワソワしだしている。
急に改まっていたのが、なんだか不思議だった。
なんだか嫌な感じがした。
背中がゾワっとして、呼吸が少しだけ浅くなる。
突然、さとみくんが口をひらく。
手の置き場がないというように、きごちなく、右手を差し出した。
あれ、
何回も、何回も聞いてきたはずなのに。
ぽろっ、ぽろっ、と取り留めもなく涙が溢れてくる。
緊張しすぎて忘れてしまっていたのだろうか。
慌てて、ポケットに忍ばせていたであろうケースを取り出した。
ぱかっ、と心地の良い音がして、
決して派手ではないけれど、素敵な指輪が挟んであった。
何かが心配だ、というように言った。
いつ指のサイズをはかったのかわからないけれど、
指輪は、ピッタリハマった。
自分の薬指にはめられた指輪を見つめる。
あぁ、やっと。やっとだ。
一度は遠ざけてしまって、もう会うことはないだろうって思ってたけど、
また、君から会いにきてくれて、
もう一度恋に落ちて、
ずっと一緒にいてくれた。
苦しくて、もどかしい時もたくさんあったけれど、
それ以上に、嬉しさで胸がいっぱいになる時があった。
それも全て、君のおかげだから。
たくさんたくさん、笑い合った
それが何よりも、幸せだった
「 結婚してください。 」
Fin.
まだもう一話、エピローグがあります!
ちょっとしたお知らせも…











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。