とある家に、私は産まれた。
お父さんと、お母さんと、双子の妹が居る家に。
とても楽しい日々を過ごしていた。
誕生日には皆でお祝いをして、
お父さん達のお休みの時には、家族皆で出かけた。
お休みじゃない時も、私は寂しいとかは思わなかった。
双子の妹が一緒に遊んでくれたし、
いとこである男の子と、3人で色んなことをして遊ぶのは、
とても楽しかった。
けど......。
小学校に上がる前から、私には悩みがあった。
双子の妹やいとこよりも感情表現が苦手なことだった。
幼稚園の先生はなんとなく分かってくれたけど、
周りの子はなかなか分かってくれなくて、
そのうちに私以外の子は、友達を作っていった。
一人ぼっちのままの私をかまってくれたのは、
相変わらず、双子の妹といとこだった。
だけど、2人にもやっぱり"友"と呼べる存在が居て。
2人が羨ましかった。
疎ましかった。
私にも、2人のように"友"と呼べる存在が欲しかった。
その思いに最初に気づいてくれたのはいとこだった。
そして、ある時こう言った。
「僕は、ほんとは"いとこ"じゃないんだよ。」
「だから、せらと僕は"友達"だよ」
――そう言ってくれた君は、なんて言う名前だっけ?
その名前も思い出せないんじゃ、もう......。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。