第4話

Chapter 3 . ( じんたん目線
982
2018/02/25 03:16
いつも通り騒がしい廊下を、友達と歩き教室に向かう。
何人かの人にすれ違い様に挨拶をされ俺も挨拶を返す。
最近は学校生活がとても充実していてたのしい。
だから毎朝学校に行くのがとても楽しみだった。
友達もそこそこいるし、勉強もすごく頭がいいって訳では無いけどまあまあ頑張れている。
だけど、何もかもが足りていると思った俺の生活にひとつ足りないものがあったのに最近気が付いた。
それは恋。
でも

恋というものは自ら探しに行くものではなく待っているもの、とどこかで聞いたことがある。
だから無理に今好きな人などを作ろうとはしなかった。
ぼーっと歩きながらそんなことを考えていると、いつの間にか教室についていた。
女の子
じんくん!おはよ〜!
友人
じんおはよ!
入った途端、数人の友達が声をかけてくれた。
俺も笑顔で挨拶を返した。
じんたん
おっはあ〜!
自分の席に俺の右肩にかかっていた重めのカバンを置く。

席に座り一息ついた。
無意識に手がポケットの中に伸びていく。
じんたん
ん…あれ、
女の子
ん?どしたの〜?
じんたん
いや、ここに入ってた生徒証明書がないんだけど…
友人
え、それやばくね?なくしたらやばいやつだよそれ
じんたん
ええ、マジ?生徒証明書ってそんな大切なん?
友達の言葉を聞いて、不安な気持ちが俺に覆いかぶさってきた。

どこやったっけなあ…
カバンの中を探したけど生徒証明書は見当たらない。
そんな時、誰かが俺のことを呼ぶ声が俺の耳に響いてきた。
友人
藤枝〜、なんか呼んでるよ
じんたん
え?だれが?
俺に声をかけてきた友達が指す方向を見ると、そこにはどこかで見たことある人が立っていた。
じんたん
…あれ、どこで見たっけな
なんて呟きながらその人の元に向かう。
テオくん
あっ、突然来ちゃってごめんね!
じんたん
ううん、大丈夫!
テオくん
で、来た理由なんだけど…
そう言って、名前も知らない彼は俺に何かを差し出してきた。
じんたん
あ、
思わず声が漏れるも、差し出された手から俺の生徒証明書を受け取る。
じんたん
これ…どこにあった?
テオくん
バスの入口に落ちてたから拾っちゃったんだけど…これじんのだよね?
突然知らない人に名前を呼ばれ、びっくりし思わず彼の顔を見あげてしまう。
すると彼は気まずそうに頭の後ろに手をやりながら口を開いた。
テオくん
あー…友達!友達に教えてもらったの!
じんたん
あ、そうなんだ…ていうかホントに助かった!ありがとう!
テオくん
いいえー!
そう言って、彼は俺に手を振りながら小走りで戻っていった。
じんたん
あっ、ちょっと待って!
無意識に彼のことを引き止めてしまった。
不思議そうにこちらを見つめる顔から、少し目をそらしてしまう。
じんたん
えっと、…名前!名前聞いてなかったから!
テオくん
あ、俺?
お前しかいないよ、なんて思い少し笑ってしまう。
テオくん
俺はテオ!
少し離れた場所からそういうテオ。
周りにはたくさんの人が居るのに、俺の目にはテオしか目に入っていない。
じんたん
じゃあ…テオくん!
じんたん
テオくんまたね!
テオ、なんて突然呼び捨てで呼ぶのはさすがに勇気がいる。

あだ名つけるの下手、なんて思われそうなただ 「くん」をつけただけの呼び方。
そんな呼び方すら嬉しかったのか、テオくんは満面の笑みで俺にもう1度手を振ってきた。
テオくん
おう!じゃあなじんたん!
じんたん
じんたん、?
そう言ってテオくんは小走りで自分の教室に戻っていった。
じんたん
…じんたん、ってなんやねん
ひとり小さく呟く。
クスリ、と笑ったのが自分でも分かった。
教室に戻り、自分の席でテオくんが拾ってきてくれた生徒証明書を見つめる。
女の子
あ!生徒証明書見つかったんだ、よかったね〜
じんたん
あ、うん!見つかった〜
女の子
…じんくん?なんか顔赤いよ?
じんたん
え、?
慌てて俺は、自分の両頬を自分の手のひらで包んだ。
たしかに少し熱い気がする。
女の子
どうしたの?熱?
ちがう、熱なんかの熱さじゃない。
これは多分
俺、テオくんのせいでこんなになってんだ。
なんの根拠もないけど、ふとそんなことを思った。
頭にテオくんの満面の笑みが浮かんでくる。

考えるとまた頬が熱くなってきてる気がして。
じんたん
…俺どうしちゃったんだろ、
頬に手を添えながら、そんなことを呟いた。

プリ小説オーディオドラマ