HN side ...
意味が分からない。
普通は、人が立つはずのないところに立っている僕をそこらの人たちはみんな無視して下を見ながら素通りするだけ。
知っていた、ここはそういうところなのだ。
冷たく、息も詰まる閉塞地帯。
だけどこの人は違う、...
なんでだろう、
そういうことじゃないんだよなぁ..ㅎ
いつものせいなのか、口調にまで影響されたみたい。
僕の体じゃなくなってく感じが、また一歩ずつ足音を立てて近づく。
今すぐにでも飛んで、空を切ってしまいたい。
あぁ、こうやってまた自分から手放すんだ。
折角見えてきた海面も、すぐそこなのに自ら落ちていく。
どうせ上がれたところで、あるのは絶望だけだ。もう懲り懲りだ、そんなものはもうとっくのとうによくすり潰して味わった....
だからもういいでしょ、
早口でそう言い、僕を捲し立てるお兄さんはさっきまでとは別人に見えた。
あの僕に向けてくれて綺麗だと思った目も、今では靭やかな放物線でも描くように鋭い目をしていた。
怖い
なんでも見透かすようなその目が、僕の足を更に怖気づかせる。
そうだ、この日を何回待ち侘びたことか。僕にはもうこれしか残ってないんだ。
じゃなきゃ、またあの生活に戻ってしまう。それだけは嫌だった。
だったら....
死んでしまったほうが、..
ほんとに、これでいいのか...
そんなの僕にだって分からない、分かるのは..僕には頼れる親類もいない、お先真っ暗な人生が残っているだけということ。
でも、..
でもっ、この人なら、、?
この人は他とは違う、この人なら...
そう思って手を伸ばした時だった、
ズルッ...
あの時、待ち望んでいた浮遊感が今になって襲ってきた。
やっぱ僕はなにをしてもだめだったんだ... ㅎㅎ
あー....お兄さんには悪いことしたな、ごめんなさい、、
ここは漢江だ、それなりに深さもある。....落ちたらきっと終わりだな。
まぁその終わりがもうすぐなんだけどね。
いいじゃないか、ずっとずっとこうしたかったんだ。それが叶ってよかったじゃないか。
ただ落ちる数秒前、瞼に焼き付いた真新しい記憶が鬱陶しく僕を離してはくれなかった。
↬𝐍𝐞𝐱𝐭
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。