第2話

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2024/04/15 13:14 更新
「兄様!」
幼い薊が少し薊より背の高い男に駆け寄る。
修行中の男は薊が近寄るとその修行をやめて薊を抱き抱えてあげる。
「どうした薊。今日も可愛いなぁ」
「ふふふっ兄様だーいすき!」


仲睦まじい兄妹。

だがそんな関係は長く続かなかった。
薊が落ちこぼれと言われるにつれ、雨月が天才と言われるにつれ、二人の間には溝ができ、次第に話すことも無くなった。

どこまでも優秀でかっこいい兄、雨月。



薊も本当は兄のように…
朧
起きたか、女
パチリ、と目が覚める。
すると上から覗き込む様に朧が薊を見下ろしていた。
十六夜薊
十六夜薊
ぎゃ、ぎゃぁあああああああ
朧
うるせぇよ
突然の鬼に悲鳴をあげる薊に容赦なくチョップをかます朧。

そこは薊の寝室であった。
十六夜薊
十六夜薊
あれ、私…
朧
お前が突然気絶するのでな
俺が運んでおいた
朧
お前、自分の体重管理くらいしろよ
腕が痺れるかと思った
手をプラプラさせながらはぁとため息をつく朧に殺意を抱いながら薊は洞窟でのことを思いだした。
十六夜薊
十六夜薊
そっか私…あまりのショックで気絶したんだ!
朧
ショックって…失礼だなおい
そう言いながらキセルに鬼力で火をつける朧。
完全にくつろいでいる。
十六夜薊
十六夜薊
…で?
なんであんたわざわざ私の式神になんかなったのよ
朧
ん?
朧
あぁ、お前に少し興味を持ったのでな
俺の寿命は長い
結界を解いてくれた礼のついでに短いお前の一生分程度ならお前の式神となって近くで観察するのもいい暇つぶしになると思ったんだよ
そう言ってほぅと息を吐く。
白い煙が薊に向かって流れて思わずむせる。
十六夜薊
十六夜薊
(要するに気まぐれってわけね…でもあの最強の鬼・朧を敵に回すともっと厄介になるし…式神として従えていた方がマシかもしれない…)
十六夜薊
十六夜薊
何となくわかったわ…でも十六夜家の落ちこぼれの私に構っても何も面白い事ないわよ
朧
落ちこぼれ?お前が?
朧はそう言うとグイッと薊に顔を近づけてまじまじと見た。
十六夜薊
十六夜薊
な、何よ…
朧
…なるほど
お前、やはり面白いな
朧はニヤリと笑うとそれ以上何も言わなかった。


するとバタバタと騒がしい足音が聞こえてきた。
十六夜薊
十六夜薊
人が来る!!
隠れて朧!
朧
うぉっ
薊に勢いよく腕をひかれ押し入れの中に押し込まれる。
それと同時に勢いよく襖が開いた。
十六夜雨月
起きていたのか、薊
十六夜薊
十六夜薊
あ…兄様
おはようございます
十六夜雨月
今日は裏山の訓練場で遠距離術式の特訓だ
他のものはもう集まっている
お前も早く来い
十六夜薊
十六夜薊
は、はい!
雨月は早口にそう言うとピシャリ、と襖を閉めて去っていった。

そろり、と朧が押し入れから出てくる。
朧
あれがお前の兄か…なるほどたしかに強いな
朧
まぁ俺の敵では無いが
そう言って余裕そうな顔をする朧。
そんな朧をよそに薊ははぁとため息をついた。
十六夜薊
十六夜薊
気楽でいいわね…私は今から1番苦手な遠距離術式の訓練だよ…どうせまた落ちこぼれって言われるんだーー!
わぁわぁと嘆きながら準備をする薊。
そんな薊を見て朧はフッと笑った。
朧
お前…馬鹿だろ
十六夜薊
十六夜薊
はぁ!?いきなりなんてこと言うのよ!
朧
今のお前には俺という最強の式神がついているのだぞ?俺とお前の前に勝てる者などおらん
十六夜薊
十六夜薊
言っとくけどあんたの存在はこれから極秘にしておくから
人前に姿出さないでよ
その言葉で朧がピシャリ、と固まった。
朧
な、何故だ…?
俺の存在を示せばお前は十六夜で落ちこぼれと言われなくなるのだぞ?
十六夜薊
十六夜薊
まぁ確かに言われなくなるわね…落ちこぼれから朧の結界を解いた裏切り者の罪人に変わるけど
朧は薊がそう言うとなるほど、という顔をした。
すると再び朧はニヤリと笑って薊の手を取った。
朧
なら、人にバレなければ良いのだな?
十六夜薊
十六夜薊
え?
すると朧は突然薊を抱き抱えて部屋を飛びだした。
十六夜薊
十六夜薊
きゃぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ
朧は薊を抱き抱えたままめにも止まらぬスピードで走り出した。
朧
安心しろ
俺の術で他人に俺たちの姿は見えてない!
十六夜薊
十六夜薊
朧のアホぉぉおおおお!!
姿は見えないが屋敷から裏山にかけて謎の突風と共に薊の悲鳴が響き渡ったのであった。

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