「兄様!」
幼い薊が少し薊より背の高い男に駆け寄る。
修行中の男は薊が近寄るとその修行をやめて薊を抱き抱えてあげる。
「どうした薊。今日も可愛いなぁ」
「ふふふっ兄様だーいすき!」
仲睦まじい兄妹。
だがそんな関係は長く続かなかった。
薊が落ちこぼれと言われるにつれ、雨月が天才と言われるにつれ、二人の間には溝ができ、次第に話すことも無くなった。
どこまでも優秀でかっこいい兄、雨月。
薊も本当は兄のように…
パチリ、と目が覚める。
すると上から覗き込む様に朧が薊を見下ろしていた。
突然の鬼に悲鳴をあげる薊に容赦なくチョップをかます朧。
そこは薊の寝室であった。
手をプラプラさせながらはぁとため息をつく朧に殺意を抱いながら薊は洞窟でのことを思いだした。
そう言いながらキセルに鬼力で火をつける朧。
完全にくつろいでいる。
そう言ってほぅと息を吐く。
白い煙が薊に向かって流れて思わずむせる。
朧はそう言うとグイッと薊に顔を近づけてまじまじと見た。
朧はニヤリと笑うとそれ以上何も言わなかった。
するとバタバタと騒がしい足音が聞こえてきた。
薊に勢いよく腕をひかれ押し入れの中に押し込まれる。
それと同時に勢いよく襖が開いた。
雨月は早口にそう言うとピシャリ、と襖を閉めて去っていった。
そろり、と朧が押し入れから出てくる。
そう言って余裕そうな顔をする朧。
そんな朧をよそに薊ははぁとため息をついた。
わぁわぁと嘆きながら準備をする薊。
そんな薊を見て朧はフッと笑った。
その言葉で朧がピシャリ、と固まった。
朧は薊がそう言うとなるほど、という顔をした。
すると再び朧はニヤリと笑って薊の手を取った。
すると朧は突然薊を抱き抱えて部屋を飛びだした。
朧は薊を抱き抱えたままめにも止まらぬスピードで走り出した。
姿は見えないが屋敷から裏山にかけて謎の突風と共に薊の悲鳴が響き渡ったのであった。














編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。