帰宅後、自室＿＿＿＿

  私は静弥と美人ちゃんの関係を知れないまま

  帰ってきてしまったことを悔いていた。

  まだ部活中だろうか。

  帰ってくるくらいに家に行ったら

  迷惑だろうか。

  思考を巡らせているとスマホが震え、

  液晶が光った。

            『 今部活が終わったんだけど、
                 トミー先生から県大会の話が出たんだ 』

                   『 男子は団体戦に
                           エントリーしようと思う 』

                  『 後で、湊にも話してみるよ 』

                                   『そうだね』

              『ところで、今日分かれた後に
                            弓道場に来ていたみたいだね』

                   『小野木と如月から聞いたんだ』

                   『何か用があったんなら聞くよ』

      
                         『そう？なら良いけど』

                『気にかかる事があるなら
                    いつでも言ってくれて構わないよ』

                       『じゃあ、また連絡する』

  団体戦がどうとか言っていたけど、

  本題は後者の話題だろう。

  中々静弥らしい心配の仕方だな、

  なんて思ってしまう。

  静弥にはこうして度々心配してもらっている。

  それは湊の事だけでなく、私の事も…

  私が弓を持たなくなってから、

  十ヶ月が経った今でも。

―――                                        ――― 

  "あなたの下の名前、！大丈夫か！？"

  "ごめん、あなたの下の名前…ほんとごめん…"

―――                                         ――― 

  今になって思い出す。

  あの事故は誰も悪くないし、

  誰のせいでもなかったのに…

  良くない事を忘れるために、

  ベットに身を投げ出して

  そのまま眠りについた。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

  生徒達がガヤガヤと話している。

  廊下の先に湊の背中を見つけた。

走っても走っても追いつかない。

  "待って湊。置いていかないで…！" 

  やっとの思いで湊の右袖を掴んだ。

  その途端に苦痛の表情で右腕を抑えながら

  
  湊は廊下に蹲った。

  呻き声を上げながら右腕を抑え続ける湊。

  過呼吸の様になりながらも声を出し始める。

  蹲ったままの湊がまた遠くなる。

  薄暗い廊下に取り残されたのは

  苦しそうな湊の声と、

  右手の親指が無くなった私だけで…

  その手を見た瞬間に背筋がゾッと冷える。

  ただ声を上げることしか出来なくて…

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

  早朝、自室のベット＿＿＿＿

  夢にしては悪夢が過ぎる程だった。

  まだ明るくなりかけているだけの空と

  白んだ部屋。

  それと青ざめた顔の私。

  昨晩はあのまま眠ってしまったらしい。

  制服のままで夕飯も食べずに眠りこけていた。

  こういう時の母親は気が利くのか利かないのか

 
  どっちだか分からない。

  とりあえず制服を脱いで浴室に向かう。

  まだ午前四時だが今日はもうこの調子じゃあ

  眠れそうになかった。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

  午前7時30分。

  いつもより早いが家を出ることにした。

  母親に軽快に送り出されるのに軽く返し、

  春らしい陽気とは言えないが

  少しだけ暖かくなった気温を頬に感じる。

  自転車の鍵を解錠し、道路に向けて車体を

  旋回させようとハンドルを握った時だった。

  昨日の今日で気まずいのもあるが、

  それよりも、何よりも…

                                   静弥 / あなたの下の名前 （）
                         「 「  何かあった？  」 」

  今朝の夢の話を端折らずに全て話した。

  何か隠し事があったら、

  静弥には気づかれてしまうから。

  奇遇だなんて微笑むけれど、

  その顔にはいつものような力はなかった。

                         ❤️・⭐️・💬 お気軽に

                       毎回大体1000字前後で
                     
                         書いてるんですけど、

                         もうちょい長い方が

                    読み応えあるんでしょうか。


                         諸々、現在模索中です。

                                                             by      . （どっと）