第8話

大切は全部
8
2025/01/02 14:01 更新
レーネ村でずっと地下にいた私が外の世界と繋がるのは、部屋の高いところにある小さな窓だけだった。
小さい頃だったらきっとそこを使えば地下室から抜け出せたんだろうけど、生憎身長が足りなかった。ようやく手が届いた頃には、私は大きくて出られなくなっていた。
でもその窓からは外の子供達が遊び駆け回る足が見えて、村の人が話す声が聞こえて。唯一の外を知る術だった。
ダリア
ダリア
(あの頃はこうやって、普通に外に出られるなんて思わなかったなぁ…。)
箒を手に、私は小さく息を吐いた。
神殿に向かった白夜が帰ってくる前に、庭の掃き掃除だけでもしておこうと思ったのだ。青空を見上げていると、ふとかつてのことを思い出して口の端が苦くなる。
ダリア
ダリア
(…そういえば。)
無理矢理違うことを考えようと思案すると、思考の隙間にある疑問が浮かんだ。
ここ、どこなんだろう。
確か、レーネ村で炎に飛び込んだ瞬間に火神の元へ来たと言っていた。古くから慣習が残る地のあの炎には、そういう性質があるのだと。
とはいえ、火神の領地はこの世界全てではない。隣にある風神領なんかには来ていないだろうし、そう考えるとレーネ村からは案外離れていないのかもしれない。
ダリア
ダリア
お父さんとお母さんのお墓に行きたいな…。
レーネ村の湖の畔にある墓地。そこにあるであろう両親の墓に想いを馳せると、少しは村に近いことに喜びを見いだせた。
村の子供が歌っていた童謡をそっと口ずさむ。小鳥が止まり木から飛び立つ…という感じの童謡。完璧には覚えていなかったから、途切れ途切れで歌っていた時だった。
白夜
白夜
随分と機嫌がよさそうだな。
ダリア
ダリア
わあぁ?!
背後から声をかけられて、あられもない声を上げながら飛び退く。いつの間にか帰ってきていたらしい白夜が腕を組んで見下ろしてきていた。驚かれたことになのかは知らないけど、若干不機嫌そうだ。
ダリア
ダリア
い、いつからいたの?!
白夜
白夜
お前が百面相をしているあたりからだな。
ダリア
ダリア
それって殆ど最初からじゃない!
驚きと執着心で顔が真っ赤。ビックリしたどころじゃない、心臓が止まるかと思った。
白夜
白夜
変な歌だな。
ダリア
ダリア
…子供が歌う歌だからね。
白夜
白夜
そういえばお前も幼子だったな。
ダリア
ダリア
私は親から聞いたとかじゃなくて、自分で覚えたから。他の子が歌ってるのを聞いて。
呼吸を整えながら答えると、白夜は少し、本の少しだけ顔色を変えた。水槽に絵の具を一滴垂らした程度の変化だけど、それに気付けるくらいには、もう白夜の変化には慣れていた。
ダリア
ダリア
どうしたの?
白夜
白夜
…いや、お前は…。
煮え切らない返答は、珍しい。白夜はいつも良くいえば素直、悪くいえば無神経なことも結構言うのに。
なんだろう。私の親についてかな?でも前に話した気もするし…。
白夜
白夜
…お前は、帰りたくないのか?故郷に。
想像の斜め上を来る問いに、私は目を見開いた。
不可解な感情が揺らぐ金色の瞳を見つめながら、少しだけ、言葉につまる。
レーネ村は…曲がりなりにも、故郷。生まれ育った地。家族も親しい人も思い出も、何もかももう残ってはいないけど。残るのは、父と母のお墓のみ。それだって大事だけど、でもーーー…。
ダリア
ダリア
あんまり、思わない、かな。
白夜
白夜
…。
ダリア
ダリア
だって、私の故郷はーーー…帰るべき家は、もうここだから。
そう言い、両腕を広げて辺りを示す。
住み慣れた離れも、中庭も、思い出も、そして大切な人も。
全部、ここにある。
たとえあと少しだけの場所でも、ここが私にとって大切な場所なのには変わりがない。





白夜
白夜
…そうか。
小さく、彼は呟いた。
白夜
白夜
お前が寂しくないならそれでいい。
主)こんにちはこんばんは!きなこもちです!

前回に引き続き短いですが、おそらく次回が長くなるのでご勘弁ください。

なんかダリアと白夜ってな~…兄妹に見えるんだよな~。
いや世話してるのは殆どダリアですけど…。

今回は関係ないけど祝由についての小ネタです!



小ネタ:祝由の想い人
祝由は耳長族エルフなので結構ご長寿です。そんな祝由は若い頃(今も若いですけど)1度だけ恋に落ちたことがありました。お相手は違う種族の女性で、他の領からやってきました。とても魅力的な人で、祝由だけでなく当代の風神も彼女を欲して、一時火神領と風神領は戦争目前になりましたが、女性本人がとある目的の為に姿をくらまし、戦争は防がれました。



うんなんか…醜い争いですね…。
後々この風神様も出てきます!未だに火神とは仲悪そう!

それでは今回はここまで!
また次回お会いしましょう~!

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