オーターは、ドアの前で杖を構えて立っていた。
舌打ちをする。
オーターの苛立ちは、もう限界に達しようとしていた。
あなたが部屋から出たすぐ後くらいのことである。
それを確認したオーターは、攻撃を強めた。
昼間の街まで轟音が響くくらいの強さで、だ。
しかし、扉が壊れる事はなかった。
仕方なく、隣の部屋から壁を突き破ろうとする。
幸い、その部屋は無人だった。
普通の壁なら簡単に壊せる。
魔法を使わなくても、足だけでもいけそうだ。
しかし、今度は壁が壊れない。
そこでオーターは考える。
中に居る誘拐犯達の魔法は、強度を向上させる魔法ではないか、と。
戦闘向きの魔法とは言えないが、誘拐をするとなれば強い。
窓みたいに鍵が付いていればよかったのだが、壊されていた。
そこが盲点だったかもしれないが、オーターは窓を通れるほど小さくはない。
モナクが来ることも想定外だったのだろう。
他に入る手段があるとしたら……
そこは強化されていない可能性がある。
確か上の階もあったはずだ。人が住んでいないのなら可能だろう。
そう思い、部屋を出ようとしたその時だった。
誘拐犯共がそう叫ぶのを聞いて、オーターは急いで現場へ駆け付ける。
オーターも目を見開く。
そこには、粉々になった鉄のようなものが積もっていた。
モナクは縦に動く。
知っている、という意味だ。
やはり魔法局は広い。
外から見ると、窓が沢山あってどこがどこだかなんて分からなかった。
多分、窓が割れてるから目立っているはずなのだが……
明らかにおかしい部屋が見えた。
破片がパラパラと落ちている。
助けてもらったのだから文句は言えない。
……言えないのだが、流石にあれはちょっと引く。
もう少しマシな割り方はなかったのか、と心の中で聞いた。
部屋に入る。
中には誰もいなかった。
モナクの声を聞き流しながら、あなたはメシシスを掴む。
長さがおかしい気がしたが、少しの間持っていなかったから、たまたまそう感じただけかもしれない。
すぐにモナクを連れて、外に出る。
出た瞬間に、そう声がした。
しかし、ここで足を止める訳にもいかないので、心の中で謝る。
ごめんなさい、私の箒のせいです……
そう言っている間にも、オーターの部屋は見えなくなった。
大分操縦にも慣れたのか、スピードが先ほどよりも速い。
オーターの発言を思い出す。
そこまで言って、モナクと同類のことに気付いた。
しかも、モナクは許しを得ているが、あなたはそれすら得ていない。
街を滅ぼすことも可能……そう考えると、怖くなってきた。
説教は避けられないだろう。
また街が騒ついているが、それ以上に緊張が強まってきて、それどころではなくなった。
ここまでやってしまったのだから、もう引き返せない。
下を向いて、何かを考えるような様子のあなたに、モナクはそう言った。
ついに部屋が見える。
まだオーターは中に入れていないようだ。
音を立てないように、慎重に近づく。
メシシスも出して、すぐ使えるようにした。
こくりと頷く。
窓を通って、オーターに夢中な誘拐犯達の後ろまで行く。
そして、鉄板の方に杖を向けて言った。
何も考えずに言った。
魔法を使おうとした時、頭の中にスッと浮かんできたのだ。
じゃりじゃりじゃりじゃり
すぐに、それは簡単に砕けていった。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。