あなたの体は、モナクと共に宙に投げ出される。
モナクから落ちそうになるが、何とか両手で掴んで回避した。
まさに宙ぶらりんの状態。
いつ落ちてもおかしくはないレベルである。
忘れかけていたが、此処は魔法界の中でも一際大きな街だ。
道は人で溢れかえっている。
そんな中、箒に掴まって飛ぶ子供が居たら……
予想通り、人々の視線はあなたに集中していた。
手懐けれずに暴走させてしまっているようにしか見えていないのだろう。
騒いではいるが誰も助けに来ない。
あなたの頭の中はパニックである。
このままだと確実に落ちる。もう腕がみしみし言ってきているのだ。
限界を迎えるのもすぐだろう。
脚光を浴びながらも飛行し、人が少ない路地裏へと辿り着く。
モナクは、縦に高い建物の屋上で止まる。
落ち着いたのを見てから、あなたは下に降りる。
そして、伸びをした。
あなたは昨日の夜の行動を思い出す。
確かオーターが、「あの馬鹿箒が暴れないようにしっかり窓を閉めておかなければ。」と目を光らせながら行っていた。ということは、鍵が開いているはずがない。
ついに……とモナクを見る。
正確には、犯罪箒だが。
出るための手段としては、鍵を無理矢理こじ開けるか、壊すか、窓を割るか。
このどれかである。
どれも犯罪級だ。
オーターに幽閉を通り越して、焼かれかねない。
短い間だけだったけどありがとう、と手を合わせる。
やっぱそうなのか……とモナクを見る。
だが、オーターがモナクに対して怒っているような様子はなかった。
誘拐犯達に向けているせいからかもしれないが、モナクに砂埃はついていないのだ。
まあオーターが怒っていないのならいいか、と安心する。
此方の精神にも負担がかかるので、そういう事は控えて欲しいのだが、助けられてしまったので何ともいえない。
そこで気づく。
オーターを置いてきてしまったことを。
不安定な煉瓦造りの建物の上で、あなたはオドオドする。
いくら神覚者とはいえ、心配である。
負ける事はほぼないだろうが、やりすぎないかという懸念が存在するのだ。
硬そうどころではない強度の扉。
それは、オーターでも壊せないようだった。今もまだ硬直状態だろうか。
答えはすぐに分かった。不可能だ。
あなたの大きさだからこそ可能だったもので、長身のオーターには出来ない。
案外しっかりとした犯行をするな……とモナクは思った。
神覚者の保護下にある子供を誘拐、ましてや暴行なんて簡単にはできないはずだ。
見た目は馬鹿そうな輩だったが、頭は良いようだ。
指示役がいるのかもしれない、とも思った。
そもそも、あなたの居場所や行動を把握しているようなやり方だった。
裏に犯罪組織が居ても変ではないだろう。
現在、モナクとあなたが居る場所は安全に近い。
部屋の中に居る誘拐犯達は窓も扉も使えない。
故に此方に来ることもないのだ。
モナクはあなたに目をやる。
頭を抱えながら、入る手段を考えていた。
窓から砂を入れれば何とかなりそうだが、オーターの魔法についてよく知らないあなたには言わない。
ぼそっと呟いてモナクに近寄る。
そして強引に掴んだ。
何故魔法局?
モナクはあなたにそう聞こうとした。
だが、その前にあなたは屋上から駆け出してモナクに飛び乗る。
乗り方を教えていないのに、というかさっきまでろくに乗れていなかったのに、あなたは難なく乗りこなしていた。
あなたの顔には、少し黒い笑みが浮かんでいた。













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。