前回こちらにきた時、話半分で柳薇が言っていた気がするのだ。七不思議は裏……といってもここ周辺の話だが、秩序なのだと。
聞いた話では、表と裏を勝手に行き来していた怪異が前回の死刑対象だったとかなんとか。
そこまで言うと、純也はようやく理解したようだ。あああの時の、と言いたげに口をぱくぱくと動かしていた。
けど、と言いかけて气氛は口をつぐんだ。
そして放たれた言葉は、思考を放棄したとしか思えない他人任せなものだった。
最後に私たちは、屋上に顔を出すことになった。
理科室を出る前、气氛に七不思議七番目の居場所を聞いたら「屋上」だと返ってきたためである。
腕に白ウサギを抱えたままの純也は歩きながら口を開いた。
色々。それは七不思議のことなのだろうか。それとも後郷里香?もしくは自首したきっかけの事件?あるいは病気のこと?
純也のことだから、きっと全部聞いてくるとは思っているが、相手は人殺しの精神患者だ。
目を細めて純也が言った。
当然のように、私は純也を信じた。
言いながら、カツカツと音を立てて螺旋階段を登る。下を覗き見れば、一回は遥か遠くにあった。
上を見れば、扉がすぐそこにあった。
今更手を合わせて何かに祈り始めた純也は、そっとドアノブを握った。
扉は思ったより軽く開いた。私たちは同時に顔を見合わせ、屋上を覗き見た。
純也の声に気がついたのか、その人もこちらを振り向いた。骨格からしておそらく男なのだが、見間違えるほどの美しさを持つ外国人であった。
外国人はこちらを見て、すこしだけ体をこわばらせた気がした。私だからわかった誤差だ。純也にも、カノウにもわからないはずだ。
当たり前のように仲良くなれると思っている純也は呑気にそんなことを聞く。
男は、目線だけを動かしながらゆっくりと口を開いた。
じっと、視線だけがこちらを追う。やがて口を開いたかと思えば、少しだけ首を傾けて微笑んだ。
そう言って駆け寄る純也の腕の中を見て、ようやくななと名乗った男は浮世に帰ってきたかのような反応を見せた。
純也の腕の中にいる白ウサギ、もといカノウの存在に気がついたようだ。
当の本人はと言えば、相変わらず呑気に腕の中でくつろいでいるが、これを実写体にすると……いや、やめておこう。
言いながら純也はななの腕の中へと兎を渡す。
初対面だとは思えないコミュニティ能力でさっさと屋上を去ろうとする純也に、ななは待ったをかけた。
一瞬、私も純也も思い出そうとして立ち止まり、視線を彷徨わせた。
鈍明光。私は聞いたことがなかった。
私と純也は中学が違う。当然、私は知らない話だった。
中学時の噂を覚えているなんて純也にしては珍しい。なんてことを思っていれば、純也はそれを読み取ったのか、小さな声で呟いた。
いつ聞いたんだっけな、とうわ言のように呟いた後、なーなバイバイ、といきなりテンションを上げるのだから勘弁してほしい。
ななも小さく手を振って、しかし屋上から出ることはなく見送ってくれた。













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。