第48話

42.心機一転
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2023/12/22 06:00
🧡side


4月に入って新しいクラスになった。恭平、みっちー、謙杜とは今年も同じクラス。それは嬉しいけど、皮肉にも西畑先輩と同じ2-5やった。この前までなら、たかがクラスだとしても喜んでたけど、今はそんな気持ちになれへん。

西畑先輩と関係が悪くなった最初の方は、謙杜に何度か 大吾くんとゆっくり話したら?って言われた。大橋くんからも、大ちゃんと話す機会作るでってメッセージは何度ももらってる。でも考えてみたら、今までの片想いの期間中、辛いこととか不安なことがたくさんあった。もうそういう気持ちになるのも疲れてしまったっていうのが本音。

それに…
担任
進級してテンションがあがるのはええけど、そろそろ進路考え始めろよ〜。今配った進路希望調査の紙、来週提出やからな。
僕は手元の進路希望調査の紙を見つめる。先輩は東京に行きたい大学があるからここの高校に入ったって言っとった。お買い物デートのときの僕はわがままやったけど、先輩の進路のためにも、僕は身を引くべき。第一、受験生の邪魔なんてしたくないし。

ポケットの中のスマホが振動する。休み時間に画面を見て、またもやもやが募っていく。
通知
西畑大吾が予定を設定しました。
先輩と話さなくなって2ヶ月くらい経っているのに、僕と先輩の共有カレンダーには、毎月丁寧に先輩の予定がいれられている。
先輩が赤色の文字で僕がオレンジ色の文字で予定を書くことになっていたけど、気まずくなってから僕だけ書くのをやめてしまって、そのせいかカレンダー上には赤色の文字ばかり増え続けている。

大橋くんや他の部員から料理部の予定を聞いたのか、部活が重なりそうな日に星マークをつけることも、休みの日に遊びに行けそうな日にはハートマークをつけることも、あのころから今までずっと変わらない。
大西流星
(先輩の気持ちが分からへん…)
僕との関係を改善したいのか、それともここ2か月の出来事をなかったことにしたいのか、分からない。


あっという間に放課後になってそれぞれが帰り始めたり部活に行ったりとざわざわしている。思い立った僕は学校探検をしてみることにした。

1年前とは見え方がやっぱり違うんやな。どこ見ても西畑先輩との思い出ばっかりや。

先輩が僕を驚かせるから、間違ってブラックコーヒーを買ってしまった自販機、先輩のことが好きって気付いた自習室前の廊下、先輩と一緒に後夜祭を過ごした裏庭、気まずい中の球技会、クラスの代表として試合しとった恭平には申し訳ないけど 密かに心の中で先輩を応援していた体育館…

最後に教室に戻ってきて、西畑先輩と初めて出会ったときと同じようにドアから教室内を覗いた。オレンジ色の空と、春の匂いは1年前と変わらない。
でもそのとき横に来てくれた人は、きっともう会わない。
大西流星
………帰ろ。
バレンタインの次の日から、わざと避けていたルートを通って家に向かう。いつの間にか小洒落た雑貨屋が立っていて、そこで赤とオレンジ色のチェック柄の箱を買った。

家に帰った僕は、すぐに部屋に篭る。新品の箱に、先輩からもらった腕時計やお揃いのマグカップ、まだ中身が残っている香水を詰めていく。こんなのももらったなって小さく笑って、先輩手作りの猫の耳のピン留めも一緒にしまった。
大西流星
………サイズ、ぴったりでええやん。
そう呟く声はひどく掠れていた。こんな小さな箱に落ち着いてしまうほど、先輩との思い出なんて小さくて脆いもの。そんな気持ちでただの思い出を詰めているだけやのに、こんなに涙が溢れるのはどうしてなんやろう。

ベッド下の引き出しを開けて、1番奥にその箱を置く。




これできっと忘れられる。また新しい恋を探すよ。




今回はセリフ少なめの文章多めでしたが、最後まで読んでくださりありがとうございます😌

次は月曜日ではなく、日曜日の昼12:00に投稿いたします!

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