次の瞬間、兄の手に握られた炎の剣がエミルの首に切りかかった。
あり得ない速度の剣をエミルは華麗にかわす。
二人はバチバチに戦っているが未だ鷹は黒雷の玉の中である。
何か私に出来ることがあればしたい…!
あ、もしかして…
失敗したらそこで私は終わる。けどやるしかない!
私は数歩後ろへ下がった。そして助走をつけて飛び上がる。バレーボールのアタックの姿勢。
と、右にリュウカの姿を確認する。
…同じこと考えてたんだね。
そっちは警戒してなかった、とばかりに驚いた様子でエミルがこちらを向く。
私とリュウカとが黒雷の玉に触れる瞬間、澄んだ蒼い水が玉を包み込んだ。
パチンと玉はシャボン玉のように割れ鷹が泡からふわりと降り立った。
鷹の姿が変わり、そこにはただならぬ気配を放つ怪物がいた。
…吸血鬼。
とっさに理解した。
エミくんの言っていたことは…事実だったんだね。
にやにやと怪しげに笑う奏。
ただならぬ予感。
パチン。
鷹と奏のハイタッチの瞬間、奏の髪が白く染まり始めた。
私達はその一部始終を見ていた。
勢いよく飛び出す奏の指先からは、夜の闇を思わせる漆黒の糸。
ん?奏に糸要素あったっけ?
と、奏が何かを引っ張る仕草をすると、兄の周りで揺らめいていた炎の勢いがいきなり強まったのだ。
まるで操られているマリオネットの様に。
確かにあれは素人の動きじゃない。
奏にそんな習い事があっただなんて。
そして、奏の言う通りだ。
私達は8人揃ってflorist!
to be continued
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。