みかside
同日 帰り道
レッスン後、おれは彼女と一緒に帰り、家まで送り届けた。
別れた後も、何度か振り返って彼女の姿を確かめる。
彼女は家の前で、おれの姿が見えなくなるまで、ずっと手を振り続けていた。
そんな子どものような愛らしい姿に、思わず頬が緩んでしまう。
名残惜しい気持ちを抑えながら、角を曲がる間際に手を振り返し、そのまま帰路につく。
今日の出来事を振り返りながら、またもや自身の口元が緩んでいることに気が付いた。
__事は、今日の朝に遡る。
おれは、朝から彼女がプロデュースしているユニット全てに声を掛けてまわっていた。
彼女のことだと言えば、どのアイドルもすぐに話に喰いついた。
少しおれを警戒しているような様子が見受けられた者も居たが。
心の底から反省した様子を見せれば、彼女思いのアイドルは皆共感し、おれの提案に簡単に乗ってくれた。
そう。今回彼女からプロデュースという仕事を奪ったのはおれだ。
全て、おれが根回ししたから起こった出来事だった。
彼女にとって仕事は全てであり、アイドルを支えることが彼女にとっての支えになっていることも分かっていた。
それは彼女と長らく関わっていれば、十二分に伝わってくることだった。
そんな彼女から仕事を奪ってしまった時、彼女はどうなるのだろう。
見事に、彼女からは「おれとのレッスンを減らす」という考えは微塵も無くなった様子だった。
おれは期が熟すのを待ちつつも、以前からお師さんに何度かライブハウスの話を持ち掛けていた。
もちろん渋っていたのは変わらないが、おれがまさかここまで強引に進めているとは思っていなかったのだろう。話していくうちに少しずつ興味を持ってくれるようになった。
それは純粋にとても嬉しかった。
そして、それを彼女は自分のことのように喜んでくれていた。
そんな彼女が、またひどく愛おしくてたまらなかった。
そんな彼女の性格を利用して。
Valkyrieの復活も利用して。
おれは彼女が自身から離れられない状況を確立したのだ。
大好きなお師さんと大好きな彼女には、仲良くしてほしいと、純粋に願っていた。
おれはかつてないほど浮き浮きがおさまらず、その日はスキップをしながら帰った。













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。