僕は本殿の扉をゆっくりと開けた。
たくさんの情報が走馬灯のように流れる。

今のはなんだったんだ。
誰の記憶なんだ?
ここは一体何なんだ?
赤い器に赤い水がある。
おみくじを赤い水に浸すと、
文字の一部に色がついた。
おみくじに浮き出た文字を
箱のダイヤルを回して入力した。
すると、箱が開いた。
“鏡”に時の写しを浮かべ
生者の血を垂らし
拍手を打って唱えよ
――時を戻し給えと―――
どんなSFだと思ったが、
その巻物を無視することは出来なかった。
不思議な力を感じる。
このまま帰ることは出来ない。
あと少しで分かりそうなのだ。
イミゴのことが、そして僕自身のことが。
赤子の写真だ。
もう一人は僕だ。
そしてもう一人は………。
彼岸の庭に行った。
鏡池をじっと覗き込む。
僕は時戻しの書を手に取った。
イミゴは激しく頭を振る。
うわ言のようにブツブツと呟いている。
誰と話してるの?
イミゴが叫ぶと、
ガクッと体を震わせて静止した。
イミゴの様子がおかしい。
声色が変わった。
まるでイミゴじゃないみたいだ。
イミゴが微笑む。恐怖で足がすくんだ。
いつの間にか背後にはさとみさんが立っていた。
後ろは大きな池だ。どうやってここに?
何の話をしてるの?
時戻しの書を取られる。
取り戻そうと手を伸ばすが、
さとみさんは巻物を池に放り投げた。

イミゴが手を伸ばして近付いてくる。
その様子は僕が知ってるイミゴじゃなかった。
意識が遠のいていく。
声はただひたすら甘く心地よい。
その声に身を委ねてしまいたい。
この温もりをずっと求めていた気がする。
視界が真っ暗になった時、
一輪の水色の彼岸花が浮かび上がった。

僕と全く同じ声が響いてくる。
るぅとという黄色い髪の子と
僕が仲良く生きてた世界……。






















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!