『2年3組』という美羽からの情報をもとに、緊張しながら3組を訪れた。
話を聞いてくれた男子の先輩は、
と爽やかに答えてくれた。
カンタって呼ばれてるんだ。
教室の端の方にいた佐藤先輩は、ドアの近くにいる私わ見て、眉を寄せた。
そして、何も言わずにこっちに来る。
……怒ってる……のかな。
やっぱり今朝のは、失礼すぎた?
不安になりながら、先輩を見つめる。
今朝見たばかりのその綺麗な顔で、先輩は私の前に立った。
そりゃそうだ。
私みたいな女子力底辺野郎に先輩がフラれたなんて周りに知られたら、大変なことになる。
先輩についていって、たどり着いたのは人気の少ない階段の踊り場だった。
先輩は私に向き直ると、あくまで無表情に、
と言った。
……え。
頭から冷たいものを浴びさせられたみたいに、フッと体温が下がった。
思わず俯いた私に、先輩は焦ったような顔をする。
そりゃ驚きはしたけど。
迷惑とな、そんなの…………ありえないのに。
その声色は、なんだか寂しそうで。
私は、先輩を傷つけちゃったんだな、って思った。
まるで言い訳だ。
私は『ごめんなさい』を言いにきたのに。
先輩は『そっか』と言って、目をふせた。
バッと顔を上げて、私は先輩を見た。
そして、自分でも予想していなかったことを口走る。
えっ。
今……私、なにを。
当然、先輩はポカンとしている。
ええっ、だって、だって。
先輩は高嶺の花すぎるから、すぐにお付き合いは無理だけど。
痴漢撃退しちゃうような、素敵な人だし。
この人を逃すのは惜しいってすずも言ってたし!
純粋に友達になりたいって思っちゃったんだもん!
うわあああ!
我ながら最低だ!
不純!
動機が不純すぎる!
正直に言いすぎだー!!
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。