ぱたん、と控え室の扉を閉める。
身体から力が抜けて、私はへなへなと床に座り込んだ。
めっちゃ緊張したし、お客さんの視線怖かったし、
何話せばいいかわかんなくなって静かになって怖いし!!
だけど、足に力が入らないな…………………
たしかに、こんなに大きなステージに立ったのは初めてだ。
私っ、変なことしてないよねっ!!?
頭がぐるぐるになって、石のように固まってしまった。
どれくらい、そうしていただろうか。
誰かが、入口のドアを開けた。
でも、そろそろ立って片付けないと。
宮舘さんの手を借りて、なんとか立ち上がった。
えー、えーっと……………………これが、いつも通り、だよね?
よく考えたら、ライブ終わりのこんな会話、初めてかも。
そう思いながら、私は宮舘さんに一言告げて部屋を出る。
手早く着替えを済ませると、
ロッカーに入れていた荷物を引っ張り出す。
ちょっと寄りたいところがあったからなぁ。
新しいピックを買うのは、私へのご褒美。
ギターの弦はいつも使っているものを買えばいいけど、
ピックはいっぱい種類があるし、選ぶのに30分はかかる。
すると、阿部さんがスッと手を挙げた。
な、なんで一緒に……………………っ!!!
ぎゅ、とカバンの取っ手を握りしめる。
向井さんの声に目もくれず、私は楽屋を飛び出した。
私の幸せは、いつもすぐに崩れる。
今日も、ほら。
なんやかんやで外で待っていると、
見覚えのある顔が、視界に入った。
『お姉ちゃん』
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。