きゅ、と口をつぐんだ。
なんて都合のいい世界なんだと呪ってしまおうとした。
なのに、溢れてくるのは全部「ありがとう」と言うものだった。
また喉の奥に声が突っかかって声が出ない。
言わなくちゃ、早く言わなくちゃ言えなくなるってわかってるけれど。
もしかしたらと怖い未来しか想像できなくなっている。
差し出された手はきっと暖かいものなのに、見た目だけはどうしても冷たいものに見えた。
すぐに感情がコロコロ変わるような奴だと引かれるかもしれない。
またクラスメイト達に変な噂をされるかもしれない。
いつか同じようなことが起こって、もう戻れなくなるかもしれない。
ぐるぐると回る思考回路、ゆっくり嘲笑うように落ちていく冷や汗はまるで私みたいだ。
今しか言えない、と開いた口は何度もぱくぱくと動くだけで声が出せない。
「ぁ、」と掠れた声が出て、もう後戻りはできないと腹を括った。
言葉が詰まって、強く、唇を噛んだ。
目には薄く水の膜ができていて、既に泣く準備は出来ていると心が訴える。
グズ、と鼻を啜った瞬間、涙が押し寄せてきて思わず涙が溢れた。
・
勇気を振り絞って俯いていた顔を上げて、再度口を開いた。
目の前にいる人たちは、ふんわりと、優しく笑ったような気がした。
涙のせいで、うまく顔が見れなかった。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。