第12話

🚪
2
2024/05/20 10:22
サムサンテックのメンバーは、開発者3人だけを連れ

て行くという通告と、視覚障害者用アプリ“視線”の

維持を条件も確信できないという事実にショックを

受けた。

イングクは契約を覆すと反論したが、60億という違

約金がかかっており、彼らのメンターであるジピョ

ンはこれ以上こじれたら危険だと思って訪ねて行っ

た。

現実を受け入れろという冷たい忠告をしたジピョン

は、今回のM&Aに至った理由がただ技術のためだけ

だという胸の痛む事実まで指摘した。

傷ついたユキノを見たイングクは腹を立てた。

このまま“視線”をあきらめきれないイングクはジピ

ョンに祖母が近いうちに失明するという事実を告

げ、助けを求めた。

これまでジピョンが“視線”に対して放ってきた毒舌

は、自分に返ってきた。

ジピョンは、いまだに“スンディン”と呼んで撫でて

くれる祖母を見ては悲しんで涙を流した。

「君を初めて見た時、漠然とした夢がとても鮮やか

になった」

というイングクの言葉のように、野球ボールに書か

れた「FOLLOW YOUR DREAM」の中の夢とは、

ユキノそのものだった。

しかしその夢は自分ではないという否定と共に野球

ボールを再びイングクの手に渡したユキノは

「私たち、何歳だと思ってるの?いつまでも夢ばか

り追いかけてはいられないわ」

と背を向けて必死に涙をこらえた。

イングクの誕生日だったこの日、二人にとって忘れ

られない別れの傷を残すことになった。

プリ小説オーディオドラマ