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第10話

10話
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2026/02/13 23:43 更新
吹き抜ける風がぬるくて気持ちが悪い。雨上がりのじめじめした空気は、なんとも言い難いものだった。
普段なら「今日も雨か」だとか「明日は晴れるといいね」だとか話しているのだろうが、今はそんな呑気な話ができる雰囲気ではない。

だって僕たち2人は今死のうとしているのだから。

つい最近までは梅雨明けはいつだとか、明日は大雨だとか、そういう天気の話で一喜一憂していた僕たちだが、もう今からは天気なんて関係ない。

だって僕たち2人は今死のうとしているのだから。

_山本 晴@やまもと はる_
山本 晴やまもと はる
和雨、ここから飛び降りるの?
高い高いビルの上。今なら月に手が届きそうだ。
_高城 和雨@たかぎ わう_
高城 和雨たかぎ わう
そうだよ。2人で逝く?1人ずつ?
_山本 晴@やまもと はる_
山本 晴やまもと はる
でも僕まだ怖いかも。
ここまで来たものの、死ぬのが怖くないわけじゃない。正直震えは止まらない。
_高城 和雨@たかぎ わう_
高城 和雨たかぎ わう
じゃあ俺が先に飛ぼうか。晴は後を追いかけてきてよ。
_山本 晴@やまもと はる_
山本 晴やまもと はる
⋯やっぱりやめよう、こんなの間違ってる。
_高城 和雨@たかぎ わう_
高城 和雨たかぎ わう
でも俺が飛んだら1人は嫌だって追いかけてくるでしょ。
_山本 晴@やまもと はる_
山本 晴やまもと はる
そういうことじゃなくて、死ぬこと自体が間違ってるんだよ!
我慢していた気持ちが、言葉が、涙と一緒に溢れる。
自分勝手なのはわかってる。そもそもお互い自分勝手だ。
_高城 和雨@たかぎ わう_
高城 和雨たかぎ わう
でも俺は決めた。1人は寂しくて泣いちゃうかもしれないから、すぐ来てね、晴。










_高城 和雨@たかぎ わう_
高城 和雨たかぎ わう
じゃあね。世界一、宇宙一、誰よりも愛してるよ。










その目は、今までで一番優しいものだった。
_山本 晴@やまもと はる_
山本 晴やまもと はる
和雨、僕も⋯
「愛してるよ」その単語を口にする前に、和雨の姿はもうフェンスの向こう側にあった。
その瞬間、和雨は空に落ちて行ったのだ。
後を追わなきゃ、わかっているのに足が動かない。
行かないで、逝かないで、和雨。僕から離れないで。僕を独りにしないで⋯。
階段を駆け下りて、すぐに和雨の元へ行った。幸い、僕が上にいる間に誰かが救急車を呼んでいた。
和雨の身体はまだぬるかった。
だが和雨は、搬送先の病院で死亡が確認された。
今頃和雨は1人で泣いているのかな、今の僕の方が泣いている気がする。失った悲しみと死ねなかった悔しさ、1人で逝かせた罪悪感が一気に込み上げてくる。
吐き気が止まらないまま、和雨の両親とも顔を合わせずにそのまま家に帰った。
スマホを開くと、天気予報のアプリが開かれていた。
_山本 晴@やまもと はる_
山本 晴やまもと はる
明日も雨か。
天気なんて関係ないと思ってた。

だって僕たち2人は今死のうとしていたのだから。

僕の心の梅雨は、いつ開けるんだろう。
ねえ、今もまだ見てますか?
忘れないでください。
僕だって貴方を忘れません。
他にいい人を見つけても、絶対に。
貴方のことを一生忘れることはありません。

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