〜ひなside〜
私の家はおかしかった。
いつから、なんて覚えてない。
気づいたときにはお父さんはいなかったし、
気づいたときにはおかしな場所に行かされていた。
そのおかしな違和感が確信に変わったのは、小学校に上がってからだった。
私は幼稚園にも保育園にも入っていなかったから、
小学校が初めて同年代の子に会える場所だった。
でも、私は最初からおかしかった。
全校集会のときは何かしらの理由をつけられ保健室につれてかれる。
音楽の時間は先生に呼び出される。
子供は大人が思うよりも空気を読める。
私はすぐにいじめられっ子になった。
「駄目よ!!!何を言ってるの!!?」
「なんて穢らわしい!!すぐに辞めなさい!!」
「何を言ってるの?駄目に決まってるでしょ?」
「そんな物見てはいけません!!!」
そんな金切り声の否定の後、お母さんは決まってこう言った。
「さぁ、お祈りしましょう。」
大人は私を腫れ物のように扱う。
ビクビクとなにかに怯え、私に媚びへつらうような笑みを浮かべながら
「なにがしたい?」と聞く。
そんなの、他の子供達は許すはずがない。
でも、誰も何も言わない。
痣だらけになっても。
水をかけられても。
給食を投げ捨てられても。
お母さんが見てるのは「かみさま」だけ。
大人が見てるのは自分の体裁と安全だけ。
私の心は壊れていった。
そんなある日のことだった。
あなたに出会ったのは。
最初は策略しかなかった。
あなたは、虐待を受けていたらしく、親が捕まって施設に入っているらしい。
そんな事を聞いて、単にクラス内の地位を上げられるかもしれないと思った。
この子に優しくしていたら大人たちも見直すかもしれない。
あなたは何を考えているのかわからない子だった。
大人たちはそれを言いように解釈していた。
「心が壊れてしまったんだろう」
「虐待に疲れてしまったんだろう」
でも、、、、違ったんだ。
思わず呆けてしまった。
でも。
2人でふわふわとした丸い雲を指す。
「「綿菓子…/!」」
声が揃う。
そして、私達は友だちになった。
そうやって、2人でいる時間が何よりも楽しかったんだ。
ある時、あなたが歌っていた。
気づいたときにはそう聞いていた。
気がつけば、私は歌っていた。
とっても楽しかったんだ。
まさか、その後にあんなことになるなんて思ってなかった。
いつものように、お祈りに連れてかれた。
いつもなら、ただ心を無にしていれば終わる。
けど、其の日は違った。
真っ白な部屋。
息を荒くして迫ってくる小太りな男。
とても嬉しそうにガラス張りの窓から見てくるお母さん。
涙が次から次に溢れ出る。
服が破かれた。
押さえつけられた。
怖い。
怖い。
「落ち着いて」
そんな、声が聞こえた気がした。
「息を吸って、吐いて」
ゆっくりと深呼吸をする。
その時。
私は間一髪で助かった。
後から聞いたこと。
私が急に落ち着いたから、男は手出しを躊躇ったらしい。
あなたは、私を救ってくれた。
お母さんは捕まった。
私は自由になった。
まだ中学生だったが、廃人状態だったお母さんに代わり家事や
中学生でもできるバイトで生きてきたこともあり私は一人暮らしが認められた。
そして。
私は、いつもあなたと話す屋上のドアを開けようとして躊躇っていた。
私のことは皆が知ってる。
周りから遠巻きにされるのは慣れている。
けど。あなたは受け入れてくれるかな。
胸が冷たい。
苦しい。
やめようと、背を向けたその時ドアが開いた。
あなたは何も言わなかった。
ただ、頭を撫でてくれた。
優しく、優しく。
私の心から冷たいのが流れていく。
瞳から温かいものが零れ落ちる。
あなたにしがみつきながら、私は死ぬほど泣いた。
写真に、珍しく笑ったあなたが写っている。
もう、あの水色を探すこともない。
もう紺色を探されることもない。
後は。
デカい本棚を見上げる。
グラグラと地面が揺れる。
本棚から本が崩れ落ちてくるのが見えた。
あ、、、死ぬのか。
降ってくる本を見ながら、私はそう願った。
.。o○ 百瀬ひな
.。o○ 享年29歳











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。