(沙鶯…!!)
目の前の存在を見て、涙が溢れる。
走ってきたのだろう。息を切らしながら相手の腕を掴んでいる。
「ぁ?なんだお前」
そっとを抱き寄せられ、相手に見せつけるように頰を撫でられた。
先程付けられた首筋の痕を見せれば、顔つきが変わった。
(沙鶯怒ってる…)
「は?突然出てきて邪魔すんなよ。今鶇君と話してる途中じゃん?」
そう低い声で怒れば、相手がびくりと肩を震わす。
「なっ…なんだよ…なら男受け狙うような服着るんじゃねぇよ!リボン付いた服着て、女みたいな見た目しやがって!!」
「大体、男がそんな服着るのおかしいだろ!!」
そう大声で叫んだ相手の言葉にどきりと胸が鳴った。
__お母さんからは、女の子のように過ごせと言われる日々だった。
今までは、お母さんの命令で着させられていた女の子のような服装。
嫌で嫌で堪らなかったけれど、沙鶯と過ごしている内に、大好きになった。
似合ってる、可愛いって素直に伝えてくれる沙鶯の言葉に、自信が持てたのだ。
沙鶯に選んでもらった服は、特にお気に入り。
それなのに、それを"男受け"と言われてしまった。
自分が好きな服を着ていたいけれど、周りの反応はそれぞれ。
(やっぱり、可愛い服着るのおかしいよね…)
「ぅ"っ…!?」
先程の言葉を聞いた沙鶯が、相手の胸ぐらを掴んだ。
今まで見たことのない冷たい顔で相手に迫っている。
「んで俺が謝んないといけねぇんだよ!!」
「っ…」
(あぁ…いつも沙鶯は…)
我慢して押し殺していた気持ちに気づいて、つぐみを安心させてくれる__
「え…月上さんも…?」
「わっ…悪かったって!そんな本気になんなよ…!!」
「ひっ……鶇君…ごめんっ…ごめん…」
先程の行為を思い出し、後退りしてしまう。
身体が震え、思うように声が出ない中、沙鶯が優しく背中を撫でてくれた。
「っ…!!」
教室を飛び出し逃げ出した相手を見て、身体の力が一気に抜ける。
ペタンと床に膝を付けば、すぐに背中を支えてくれた。
優しく微笑む沙鶯を見た途端、涙が止まらなくなった。
いつもつぐみを守ってくれる。
高校生の時から、沙鶯はつぐみのヒーローだ。
精一杯の声で伝えれば、涙を拭ってくれた。
ぎゅっと抱きしめられる。
大好きな香りに包まれ、顔を埋めれば額にキスをしてくれた。
優しく微笑みながら話す沙鶯。
(ぁ…そうだ…)
さっきは冷静に考えることができなかったけれど、つぐみの服を可愛いって言ってくれる人は沢山いた。
晴向に雨月、楓馬に雛さん、こたに琥珀だって皆容姿を馬鹿にしたことなんてなかった。
つぐみはつぐみのままで良いって、そう言ってくれた大切な存在達。
可愛い服を着たって、つぐみはつぐみなんだから。
(後でちゃん無事の連絡しないと…)
心配してくれた皆に、感謝の気持ちも伝えなきゃ。
解けたリボンの隙間から、首筋に指が這う。
嫉妬した顔で首の痕をなぞられる。
取れたボタンに気づき、そっと上着を着させてくれた。
(学校でこんなこと考えちゃダメなのに…っ♡♡)
下を向いて赤くなった頰を隠そうとすれば、顔を上げられた。
沙鶯にはばればれのようで、意地悪なことを聞いてきた。
でも…沙鶯に触って欲しいから。
__
そう耳元で囁けば、予想外の言葉だったのか顔を赤くした。
(学校でいけないことしてる…♡♡)
誰かに見られるかもしれないドキドキ感。
でもそんなの関係ない、早く沙鶯に触りたいって身体が反応する。
誰もいない教室にリップ音が響く。
あぁ、早く上書きしてほしい。
全部全部、沙鶯に染められたい。
そう願いながら、首に腕を絡めた__
お久しぶりです〜!!更新遅れてしまって本当にごめんなさい…!!!!
荷造り、引っ越し作業、病院…忙しい2週間を過ごしていました…。
この後、さおつぐはトイレでむふふであははなことをしました。
因みに晴向、雨月、楓馬の3人は鶇と沙鶯のことが心配で授業に身が入りませんでした…鶇セコムは沢山います(こたは後日話を聞いて、この子は守ると誓います※こたも守られる側)
さて、次回は晴雨を予定していたのですが、虎春の更新もしなければ話が進まないので、優先して虎春を更新します(晴雨を楽しみにしていた皆様、申し訳ございません…!!)
いいね、お気に入り登録、コメントありがとうございます〜!!
次回はすぐに更新すると思います!!
次回もお越しください〜!!
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。