第54話

53.がんばれの文字
1,004
2025/11/09 22:54 更新




翌朝、目を覚ますと

いつもの見慣れた風景ではなく

心がそわそわするような

居心地の悪い場所だと実感した



この天井も、この匂いもあの頃のまま





何も変わらずわたしの部屋のままだった





嫌になるまで勉強したこの机も

勉強していた参考書もこのままだった




なんとなくその1冊を開いた





今となれば何のためにこんなに覚えたのか

大人になったら使うことがあると思っていたのか

どの問題も今じゃ解くこともできない




ぱらばら捲っていく1ページ


1枚の紙が出てきた





「がんばれ、生徒会長」





そう一言書かれたメモ



その文字も書き方を見てあの頃が蘇る






(なまえ)
あなた
これが終われば、自由になれるかな




大学入試を翌週に控えた放課後


自由登校になったその教室には

誰も来ることはなかった


図書館の改装工事で

仕方なく学校で勉強することにしたわたしは

誰もいない教室で夕方まで勉強を続けた



夕焼けに染る教室の窓の向こうは

心を癒して眠気も誘ってきた




(なまえ)
あなた
寝ちゃった..


大きく背伸びをすると

ぱらりと落ちた紙




そのぶっきらぼうな書き方、文字は

一緒に勉強していたからわかる

間違いなくジョングクくんの文字だった




急いで周りを見渡したが

そこにジョングクくんの姿はなかった





(なまえ)
あなた
もう、生徒会長じゃないよ..




誰かが見てくれている、

誰かが応援してくれているという安心感



本当に、自由になれる気がした







そして、なれた




はずだった









(なまえ)
あなた
懐かしい...



懐かしいそのメモを

携帯ケースのポケットに入れた




絶対に屈しない




絶対に戦ってみせる






あなたには負けない





お父さん











(なまえ)
あなた
おはようございます!

ジミン
ジミン
おはよう!
ジミン
ジミン
なんか元気いいね

(なまえ)
あなた
そうですか?
思い出したことがあって
すごく懐かしいこと..

ジミン
ジミン
なに?ジョングクのこと?

(なまえ)
あなた
、ちがっ  ///
違いますよ!!

ジミン
ジミン
ふはっ、わかりやす!ㅎ

(なまえ)
あなた
⋯あ、あれ?社長は?

ジミン
ジミン
聞いてない?
出かけの用があるからって..



携帯を確認するが連絡はない

小さく首を振った




ジミン
ジミン
お昼には戻ると思うよ




社長室に入って作業を続ける


溜まっていた書類を一気に終わらせた




その中で気づいてしまった





【契約前書類】



フォルダにロックがかかっている



前にもそんな事があったような...






ジミン
ジミン
お疲れさま、これもお願い

(なまえ)
あなた
あ、はい..
あのジミンさん、これ⋯
どうしてロックがかけてあるんですか?

ジミン
ジミン
あ、⋯⋯それ?
なんか、まだ作業中だから⋯
そのジョングクがその⋯

(なまえ)
あなた
そう、ですか..



なんだろう、この違和感⋯⋯



胸がそわそわする




ジョングクくんに聞いてみよう






ジョングク
ジョングク
戻りました

(なまえ)
あなた
あ、ジョングクくん...

ジョングク
ジョングク
あなた...

(なまえ)
あなた
どこ行ってたの?

ジョングク
ジョングク
ちょっと..

(なまえ)
あなた
そう...




どうして、こんなによそよそしいんだろう



きっとなにかあるけど、

ジョングクくんは絶対言ってくれる



わたしはあなたを信じてる






わたしは気付かないふりをして作業を続けた






ジミン
ジミン
あ、今日遊園地の点灯式でしょ?
夕方出れば大丈夫だよね

(なまえ)
あなた
あの高台の?

ジョングク
ジョングク
そっか、今日か
そうですね、夕方に出ましょう



車内でもいつもは楽しく話をするのに

今日はジミンさんもジョングクくんも黙ったまま



わたし、なんかした?



李さん?






点灯式でも業務報告だけしか会話がなく

綺麗なイルミネーションを見てもなにも思わなかった




気持ちが入ると入らないでは


こんなにも見るものを変えてしまうんだ




ジョングクくんの心が離れている気がする




ねえ、どうして?


わたしなにかしちゃったかな?




イルミネーションを見つめる

ジョングクくんの背中をわたしは見つめる






ジミン
ジミン
じゃあ、僕は最終調整して帰るから
あなたさんはジョングクと帰って
お疲れさま!


ジミンさんは遊園地の責任者と事務所に向かった


わたしはジョングクくんと家の方向に歩く



仕事の話はするけど、

それ以外の話はなかった






ジョングク
ジョングク
じゃあ、おやすみ






ジョングクくんはマンションに向かう







(なまえ)
あなた
⋯⋯っ、
(なまえ)
あなた
待って!!!
(なまえ)
あなた
は、話があるの!



ジョングク
ジョングク
ん、なに?



わたしは携帯のポケットから紙を取り出した




(なまえ)
あなた
これ、ジョングクくんだよね
(なまえ)
あなた
ありがとう!
(なまえ)
あなた
って言えてなかったから...



ジョングクくんはゆっくりわたしの方に向かうと

その紙を手に取って見つめた



その文字を見た瞬間目を見開いて目を泳がせた




ジョングク
ジョングク
、なにこれ…///
な、なんでこんなもの?

(なまえ)
あなた
見つけたの、今日
(なまえ)
あなた
すごく嬉しかった
応援してくれてるって思ったから
大学入試頑張れたんだよ


ジョングクくんが

素っ気なくする意味はわからない


でも、わたしは変わらずあなたを想うよ



(なまえ)
あなた
この言葉、試験中に何度も見てね、
その度に自分を奮い立たせた
絶対負けないぞーって..
(なまえ)
あなた
わたしはどんな出会い別れも
全部受け入れるって決めてる
いい出会いも悪い出会いも
(なまえ)
あなた
でもね、ジョングクくん
ジョングクくんに会えたこと、
学生時代も今もそばにいてくれること
それだけは神様に感謝したい!!!
(なまえ)
あなた
わたしの運のない人生でも、
それだけが幸運だったと思うから
(なまえ)
あなた
だから、なにも聞かない
なにも言わなくていい..
でも、離れて行かないで...






ジョングクくんは


黙ってわたしを抱きしめてくれた





暖かくて、優しい







ジョングク
ジョングク
僕⋯⋯っ、
ごめん..
ジョングク
ジョングク
不安にさせたんだね...
これは僕の問題なのにあなたを巻き込んだ




ジョングクくんが力が強くなって

さっきよりも強く腕が体に食い込む







ジョングク
ジョングク
離れることなんてないって
言ったはずだよ!


(なまえ)
あなた
よかった ぁ...




緊張の糸が切れると

急に涙が出そうになる....





(なまえ)
あなた
なにか、嫌われることしたのかなって
⋯不安で..っ



震えてしまう声を必死で我慢する




ジョングク
ジョングク
ごめんっ...
僕は弱い人間だから、
あなたに負担ばかりかけてしまう
でも、あなたが1番大切で大好きで
そんなことすら忘れてしまう
僕はバカで、
ジョングク
ジョングク
そもそもなんで僕はこんなに
悩んでいるんだ?
僕の目に見えているものが
全てじゃないか
なにも考える必要なんてないのに...
ジョングク
ジョングク
そんなはずないじゃないだろ!
ほんっと、ふざけやがって...


(なまえ)
あなた
ちょ、ちょっと⋯?
何言ってるのか、わかんなっ⋯



話が終わる前に

ジョングクは両手であなたの頬を挟む



尖されせた口のまま

ジョングクくんを見つめる





(なまえ)
あなた
⋯⋯ん?


ジョングク
ジョングク
僕はずーっとあなたが好きだった!

(なまえ)
あなた
!!///

ジョングク
ジョングク
誰よりもあなたをよく見てきた
だからわかるんだよ!
こんなに素敵で優しくて
一生懸命で人想いなんだ!
ジョングク
ジョングク
だから好きなんだ!!

(なまえ)
あなた
な、なに⋯っ?///
恥ずかしいよ..


ジョングク
ジョングク
僕が守ってあげなきゃいけないのに
またあなたに気付かされた ㅎ

(なまえ)
あなた
なんか言った?わたし..

ジョングク
ジョングク
僕にはあなたがいなきゃだめみたい
だからそばにいてよ




ジョングクくんは優しく目を細めて

甘い視線で見つめる



その顔は弱い...///



ドキドキしちゃうの...


胸を締め付けるくらいのときめき





ジョングク
ジョングク
もう少し、くっついていたいんだけど..
家、来る?///




握りしめる手のひらに力がこもる




わたしは小さく頷く




嬉しそうに笑顔を向けると

その指を手に絡めて、

ジョングクくんのマンションに向かった





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