違う、俺が駆けつけた時はもっと...
もっと言い表せないくらい、全身に酷い傷があった
それに俺たちヒーローは1歩も動けなかった
助けに行こうにも、プレッシャーに負けてしまった
特に後から来たあの男、まさに王と呼ぶにふさわしい風格だった
テレビには見るも無惨な程壊れたビルや道路が映っていた
10月31日、渋谷を中心に起こった大きな戦い
我々が連絡を受けた時はまだ呪霊だとは知らされておらず
政府からはヒーローへ待機命令が下っていた
あくまでも呪霊は東京にのみ発生するという情報が発表されたが、それは混乱を招かないようにするためだろう
ただこのことは他国にも多大な影響を及ぼしかねない大事件だ
真剣な面持ちで問い詰めてくる
一体あの後どうなったのかと今すぐに状況を把握していたい様子だ
端末を志村さんに手渡す
メールにはPDFだけが送られてきたのかと思っていた
よく見ると下のほうにメッセージが書いてあった
九条さんから
「あなたの下の名前さんを頼みます。」
という明らかに俺宛のメッセージだった
きっとよからぬことが起こっているのだろうが、志村さんは表情ひとつ変えずに
「そっか、うん。わかったありがと」
とだけ言った
そう言って、繋がっていた点滴を全て抜き取って立ち上がった
根津校長が出て行ってすぐ、校内の放送が鳴った
ただ、それは見ていて楽しいものでは決してなく
生徒に見せるには少し惨すぎた
起きてから今まで1度も揺るがなかった志村さんの瞳が少し揺らいでいた
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。