私は今日も彼女に付いて行く。
《ローダンセ》
夜の街を2人でぶらぶらと歩く。
私たちはヒーローや警察に追われる身。
だから昼間はあまり自由に動けない。
そのせいでスイーツ店巡りとか、なかなか出来ないからミコちゃんに提案してみた。
私の〝個性〟は『脳波操作』。
裸眼の状態で相手の目を直視すると、相手の脳の電気信号を狂わせることが出来る。
だからいつもは厚めの眼鏡をかけたり、コンタクトをして個性を抑えているけど。
久しぶりのミコちゃんとの夜遊びにワクワクしてくる。連合に入ってからは色々やることが多くて時間がとれなかったから…。
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それから私たちはファストフード店でスイーツを食べながらお喋りしたり、ゲームセンターで遊んだりした。
運良くヒーローにも警察にも見つからなかったし。
ミコちゃんの手をとって歩く。
ミコちゃんと私は小学生からの付き合いだ。
根が明るくて人との付き合い方も熟知していたミコちゃんと違って、私は喋り下手でいつも教室の隅で本ばかり読んでた。
お互いに〝個性〟を抑圧して生きていたとは言え、根本的な性格が違ったから最初は会話することだって無かった。
けど、私はずっとミコちゃんに憧れてた。
ミコちゃんみたいになれたらなぁ…って何度心の中でぼやいたことか。
だから、同じ中学に入って初めて声を掛けられたときは本当に嬉しかった。
コンタクトデビューした私の顔を見て、
『綺麗な瞳だねぇ。』
って。
ミコちゃんからしたら、ただ目についたからそう言っただけかもしれないけど、それまで両親にすら〝人の目を見ないように〟と躾られていた私にはその一言が救いだった。
それから私はミコちゃんのグループに入れてもらって、色々なことをして遊ぶようになった。
学校にこっそりゲームを持って来たり、授業中にスマホでメッセージを送ったり…絵に描いたような真面目ちゃんだった私には、何もかもが新鮮だった。
だから、中学を卒業するあの日、一線を越えてしまったミコちゃんを見て、反射的に彼女の手をとって逃げ出した。
追ってきた教師や警察を〝個性〟で昏倒させて…私はミコちゃんと逃亡した。
そう言って私はミコちゃんの身体を抱き締めた。
それからタガが外れた私たちはお互いに支え合いながら好きなように生きた。
ミコちゃんは血液への執着を抑えないこと、私はミコちゃんの手助けをすることに喜びを感じながら…。
そうしているうちに、こうしてヴィラン連合に入ることになったわけだけど…。
これからもミコちゃんが〝笑って〟生きられるように…そんな世界を弔くんたちと創れるように、私は繋いだ手を離さずに夜の街に溶け込んでいった。
『ローダンセ』(終わりのない友情)
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。