あなたの後ろを歩き続けて十分もしないうちに、あなたの足が止まってつい私も足を止める。
どうしたんだろう。そう疑問に思うものの、未だ凍りついたあなたに声をかける勇気はなくて。
あなたが口を開くのを待っていると、声が聞こえる前に私の体を少し震えた腕が包む。
泣きながら私を抱きしめるあなたの涙が、私の肩にこぼれ落ちる。
ごめん?なんであなたが謝る必要があるの?
あなたは私を守ってくれたじゃん。謝る必要なんてないよ
そう言いたくても、泣いているあなたが珍しくて貴重な気がする。
もう少しだけこの時間が続いて欲しくて、その言葉を押し込めた。
しばらく抱き締められていると、ようやく落ち着いてきたあなたが私から離れる。
離れてしまったその体温が少しだけ悲しくて、でも恋人でもないんだからそんなこと言えるはずがなくて。
その時に見たあなたの顔はこれ以上にないくらい笑顔で、
さっきのあの酷く沈んだ瞳は眩しいくらい輝いていて。
それが涙の影響かどうかは知らないけど、あなたのさっきのあの顔の面影すらもないその笑顔が見れて、
私の心は満たされて。
離れない。きっとあなたは友達としての発言なんだろうけど。
私は...あなたがたとえどんなに大罪を犯しても、絶対離れない。
それが好きってことだと思うから。
気付いたら午前の時間割が終わっていた。普段は授業内容でごちゃごちゃしている私の頭の中も、
今日ばっかりはスッキリしていて、むしろハッピーな思考で埋め尽くされていた。
いつも授業終わりはありえないくらいに沈んでいる顔だったのに、スッキリした顔をしている私に
あなたが気味悪そうに近づいてくる。
少し苦笑いをしたすぐ後に、少し苦しそうな顔をしたあなた。
駆け寄ってあげると、また心配をかけたくないのか知らないけれど、
“大丈夫だから...“と眉間に皺を寄せて微笑む。
どこが大丈夫なの?って思ったけど、きっとここで大事にするのはあなたの意思じゃない。
そう思ってとりあえずあなたのそれが落ち着くまで背中をさすり続ける。
何もできない自分が憎い。ただ隣に座ってただ背中に手を置くことしかできない自分が。
...どうしてあなたがこんな目に合わないといけないのだろう?
あんなにも色んな人を楽しませて、助けて、救って来たあなたが。
何をしたの?何もしてないのになんであなたが?
考え込んでいる私の頭にぽんっと優しい手が撫でてくれる。
心配そうな表情で見つめてくるあなたを見るとより疑問に思ってしまう。
こんなに心優しくて、芯が強くて人のことを考えられるのに。
そんなことを言いながらその場で一周回ってタンっと軽やかな音を鳴らす。
ピンピンって言うのはさ、すっかり病気から治った人が言うんだよ
バカなんじゃないの?なんて面と向かって言ったら怒られるから
もっと自分を大切にしろこのばか!
そんな気持ちを込めてあなたの肩を小突く。
その小突きに対して何すんの!なんて無邪気に笑ってる。
その笑顔でまた苦しくなって。
負の無限ループに陥って。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。