第5話

四話
102
2026/06/23 12:49 更新
あなた
はぁ…


あなた
もうすぐ体育祭か…



体育祭。

それは、運動神経の良い子と陽キャの為のイベントである。(そんなことはない)



運動も特別できるわけではなければ、クラスの中心的存在でもない私にとって、体育祭は正直楽しみだとは言えない。
あなた
(まあ、太宰先輩が走る所は見れるから良いけど。)

運動神経の良い太宰先輩は去年もリレー選手。



しかも中原先輩もリレー選手だったから、2人で競ってる様だ。






あなた
(私が出るのはクラス対抗の綱引きだけ。)
あなた
(クラスの足だけは引っ張らない様にしよ…)





綱引きだけ頑張れば良い、そう思っていたのに。





…さん、





あなたの下の名前さん!
あなた
ん!?
あなた
ご、ごめん。気付かなかった!
僕こそいきなりごめんね。




この優しそうな少年は中島敦君。 
 

敦君とは去年も同じクラスだ。
あなた
で、どうしたの?
実は、体育祭のリレーの事で…






……何か嫌な予感がする。

体育祭って一週間後だよね?実は、女子のアンカーの子がやっぱりやりたくないみたいで…



あなた
は、はぁ…
あなた
…で、真逆だけど、アンカーを私がやる、て訳じゃないよね??




あ、それが…




あなた
あはは〜。私ちょっと職員室に用事あったから行ってくるね〜
お願い!リレーのアンカーを走ってくれないかな…?




矢張り…


あなた
い、嫌だよ!私、対して速くないし…
で、でも。クラスのタイム見ると、あなたの下の名前さん女子の中で3番目ぐらいに速かったよ?
あなた
う…





そう。
私は、「足」だけは謎に速いのだ。
お願い!他に変わりが居なくて…





あなた
……
あなた
(めちゃくちゃやりたくない…)





あなた
(けど…)


ちらっと敦君の顔を見る。



敦君は私に頼る様な表情で、子犬の様に私を見る。





あなた
(敦君は学級委員だし、いつも頑張ってくれてるしな…)












あなた
はあ…







あなた
分かったよ…
ほ、本当!?ありがとう!


敦君の顔がぱぁっと明るくなる。



その顔をされると、なんだか自分がアンカーをやるのも悪くない様な気もしてくる。






あなた
(アンカー、かぁ…)
あなた
という訳で。
太宰
それで、アンカーやることになったのかい。



放課後。いつもの様に勉強を教えてくれる太宰先輩に軽く愚痴を言う。




太宰先輩はのんびりとそれを聞いてくれる。
あなた
大体、リレー選手決める時はやりたいって言ったのに、ギリギリになってやりたくないとか!
あなた
困りません!?



太宰
まあ、確かにそうだね。
あなた
はあ…
あなた
太宰先輩は今年もリレー選手ですよね。
太宰
そうだね。



あなた
はあ…やりたくないなぁ…



そう言って嫌そうにしている私を太宰先輩はしばらく見つめていたが、不意になにか思いついた様な顔をした。



太宰
じゃあ。





太宰
もし君が他のクラスの人を抜かしたら。








太宰先輩がニヤリとする。



太宰
何か、願いを一つ聞いてあげようか。
あなた
え、






あなた
良いんですか!?

太宰
ああ、いいよ。


太宰先輩が願いを聞いてくれる。


これは中々無いチャンスだ。
あなた
ちなみに、付き合うってのは…
太宰
それは駄目。
あなた
ですよねー







まあ、そんなので付き合ってもらってもなんか複雑だし。



太宰
まあ、頑張ってよ。
太宰先輩はそう言ってニコニコと笑う。
  
 

私が抜かせないとでも思っているのだろうか。




あなた
(よし…ぜっったいに抜かすぞ…)





この時、初めて私の体育祭への思いに火がついたのだった。

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