体育祭。
それは、運動神経の良い子と陽キャの為のイベントである。(そんなことはない)
運動も特別できるわけではなければ、クラスの中心的存在でもない私にとって、体育祭は正直楽しみだとは言えない。
運動神経の良い太宰先輩は去年もリレー選手。
しかも中原先輩もリレー選手だったから、2人で競ってる様だ。
綱引きだけ頑張れば良い、そう思っていたのに。
この優しそうな少年は中島敦君。
敦君とは去年も同じクラスだ。
……何か嫌な予感がする。
矢張り…
そう。
私は、「足」だけは謎に速いのだ。
ちらっと敦君の顔を見る。
敦君は私に頼る様な表情で、子犬の様に私を見る。
敦君の顔がぱぁっと明るくなる。
その顔をされると、なんだか自分がアンカーをやるのも悪くない様な気もしてくる。
放課後。いつもの様に勉強を教えてくれる太宰先輩に軽く愚痴を言う。
太宰先輩はのんびりとそれを聞いてくれる。
そう言って嫌そうにしている私を太宰先輩はしばらく見つめていたが、不意になにか思いついた様な顔をした。
太宰先輩がニヤリとする。
太宰先輩が願いを聞いてくれる。
これは中々無いチャンスだ。
まあ、そんなので付き合ってもらってもなんか複雑だし。
太宰先輩はそう言ってニコニコと笑う。
私が抜かせないとでも思っているのだろうか。
この時、初めて私の体育祭への思いに火がついたのだった。











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。