丘の上を教えてもらい、そこに向かって足を進める
早く、早く、こうしてる間にも記憶がどんどん無くなる
「獅音……」
〜♪
「?!」
「月光の第一楽章……!!」
段々と丘の上に近づいてきた
あと少し、あと少しで獅音に会える
音を頼りにどんどん進む
「……っ、獅音!!」
??「え……?」
ピアノを弾いてる彼が振り返る
彼は、完全に獅音だった
でもやっぱり自分の名前は覚えてないみたいで
なんだか少し寂しくなった
獅音「それ、俺の名前?」
「そうだよ、獅音が貴方の名前」
獅音「そっか……、君は?」
「……私の事、覚えてない?」
覚えてなんて無いだろうけど
やっぱりそれでも覚えてて欲しくて
無駄だと分かっていても聞いてしまう
獅音「……君の声は聞き覚えがある」
獅音「その、髪飾りも見覚えがある」
獅音「俺が、プレゼントした……やつ?」
「……!」
「そう!」
「このひまわりの髪飾りは獅音がくれたの」
「夏祭りの日に、2人で行って」
「この髪飾りをくれたんだよ」
「でもその翌日から行方不明になって」
「心配して、心配して、なのに死んでるとか……ッッ」
目からどんどん涙が溢れてくる
こっちは心配してたんだよ、3ヶ月行方不明で
無事に会えるように毎日神社に通ってお祈りして
なのに、その結果が“死”だなんてあまりにも惨すぎる
獅音「……((ギュ」
「獅音のばか……ッッ」
獅音「ごめん、ごめんね((ナデナデ」
抱きしめてくれた彼の体温は、無かった
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。