第5話

シーン5: アジフライの魅力総括
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2025/05/16 13:04 更新
公園のベンチに並んだ三枚のアジフライ。夕暮れのオレンジ色に照らされて、衣はまるで宝石のように黄金色に輝いている。

春菜が一呼吸置いて、そっと箸を持ち上げた。
朝比奈 春菜(あさひな はるな)
朝比奈 春菜(あさひな はるな)
「まずは〈食感〉。表面のザクザクから、一瞬で歯がすり抜けるパリッと感。二度揚げだからこそのハーモニーだよね。」
春菜が指で衣を軽くつまむと、衣層のコントラストがくっきり見える。細かいパン粉部分は繊細にパリッと、粗め部分は豪快にザクザク。
青木 咲(あおき さき)
青木 咲(あおき さき)
「うんうん、次は〈香り〉。揚げたてのパン粉とごま油の香ばしさが、鼻を抜ける瞬間がたまらないんだよ!」
咲は鼻を近づけて深く息を吸い込む。揚げ油の甘い香りと、ほんのり残る青じその爽やかさが混ざり合い、空気まで味わい深く感じられる。
朝比奈 春菜(あさひな はるな)
朝比奈 春菜(あさひな はるな)
「そして〈旨み〉。アジ本来のジューシーな身が、口中でホクホクとほどける。潮の香りと脂の甘みが、衣を通して一気に広がるよ。」
春菜がひと口かじると、じゅわりと熱いアジのエキスが広がり、二人とも思わず目を閉じた。

――結衣は、そんな二人を静かに見つめながら、ポツリとつぶやく。
「ザクザク/パリパリの音も、この香りも、この弾む旨みも…たしかに、やみつきになるかもね。」
三人は無言のまま、もう一度そろって箸を伸ばす。口に運ぶ刹那、夕空に残る最後の光とともに、アジフライが生み出す五感のトリプルプレジャー――“幸福の三重奏”が、心の奥まで響いていった。

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