公園のベンチに並んだ三枚のアジフライ。夕暮れのオレンジ色に照らされて、衣はまるで宝石のように黄金色に輝いている。
春菜が一呼吸置いて、そっと箸を持ち上げた。
春菜が指で衣を軽くつまむと、衣層のコントラストがくっきり見える。細かいパン粉部分は繊細にパリッと、粗め部分は豪快にザクザク。
咲は鼻を近づけて深く息を吸い込む。揚げ油の甘い香りと、ほんのり残る青じその爽やかさが混ざり合い、空気まで味わい深く感じられる。
春菜がひと口かじると、じゅわりと熱いアジのエキスが広がり、二人とも思わず目を閉じた。
――結衣は、そんな二人を静かに見つめながら、ポツリとつぶやく。
「ザクザク/パリパリの音も、この香りも、この弾む旨みも…たしかに、やみつきになるかもね。」
三人は無言のまま、もう一度そろって箸を伸ばす。口に運ぶ刹那、夕空に残る最後の光とともに、アジフライが生み出す五感のトリプルプレジャー――“幸福の三重奏”が、心の奥まで響いていった。














編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。