あなたside
あれから月日は流れ、
世間は春真っ只中だった。
もう慣れた。いや、元に戻っただけ。
そう思えば、自然と悲しむことはなくなった。
あの頃の記憶は、心にあるだけでいいんだ。
幸せだと思えた記憶は、もういらない。
無駄に多い洗い物を済ませ、
部屋に戻り、スマホを開く。
『目黒蓮』の名前。
消そうと思っても消せない人。
けど、私たちの関係は終わった。
もう、未練なんか持っちゃいけない。
すると、
ガチャ🚪
ガチャン🚪
ガチャン🚪
部屋に戻り、
勉強机の椅子に座り、手紙を開く。
✎︎______________
拝啓、あなたの名字あなた様。
お元気ですか?
春になり、桜が舞う季節となりました。
手紙を送ったのは、
あの時に話したかった本音を伝えたかったからです。
あなたと結婚したのは理由は、
初めは、会社と肩書きのためでした。
会社を大きくするには、交流も必須。
そのためには、既婚の方が得することがある。
今まで沢山の方と見合いをして、
会社のためになる人を見定めてきました。
でも、あなたに出会って分かった。
初めから、あなたに支えられたかった。
会社や肩書きのためだと思っていても、
心の中では、支えてもらえて心地よかった。
徐々に縮まった距離や、遠ざかった距離。
その度に、心苦しかった。
美桜とのこと、気になっていたでしょう。
美桜のことは好きでした。
初めて人を尊敬し、好きになった人でした。
けれど、本当は彼女への愛は少し曲がっていました。
あなたに出会ってから、なぜか心が苦しくて、
美桜といる時よりも、あなたといる自分が好きで、
過去を聞いて言葉をくれたのも、すごく救われた。
長々と申し訳ございません。
ですが、これだけは伝えたい。
俺はあなたを愛しています。
これは嘘じゃない。
最後に会ったあの日、言いたくて言えなかった。
でも今なら言える。
今日の夜、またあの神社で待っています。
来なくてもいい。この手紙を捨ててもいい。
ただ、待ってます。
✎︎______________
全て手書きで書かれた手紙。
最後には、『目黒蓮』という名前。
窓の外を見ると、もうすぐ日が暮れる頃。
私の足は、自然と神社へ向かっていた。
𝐍𝐞𝐱𝐭➸













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。