保科side
あなたの下の名前の記憶がなくなって
心に穴が空いたみたいになった
手足が冷えて
何もしていないのに疲れていて
やる気も出ない
こんなんじゃ、あなたの下の名前が怒るに決まってる
…でも今のあなたの下の名前は俺のことを怒ってくれん
叱ってくれん
俺のことを叱ったあとに見せる笑顔も
今じゃ見れん
当たり前と思っとたことが
こんなにも儚いとは思わなかった
この手から離れていく感覚が
怖くて堪らない
自分がこんなに弱いなんてな…
そこからあなたの下の名前には会わなかった
顔を見ると、思い出す
昔の記憶を
だから、仕事を優先した
逃げてる、そう言われてもしょうがない
けど…
わかってた
あなたの下の名前をあんなにしたやつ
憎くて、嫌で、嫌いで
でもそれは…怪獣でも、他のやつでもなかった
一番許せなかったのは、俺やった
あなたの下の名前があぁなる前も、今も
何もできない、逃げてるだけの自分が
一番嫌いやった
なんや、それ…
なんで…
亜白隊長だけじゃなく
…後輩にまで背中押されて
ほんと、バカやな…
早く、1秒でも…早く
ガラッ…
「記憶がなくても、あなたの下の名前さんは副隊長のことを愛してると思うし、離れたら寂しいと思います」
カフカの言葉が頭をよぎって
そうやな、そうや
例え記憶がなくても
あなたの下の名前はあなたの下の名前や
ぎゅうっ…
記憶がなくたって
思い出すまで待ってるから
記憶が戻らなくても
俺はあなたの下の名前を
ずっと愛してるから
















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!