第93話

【th】運命
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2023/11/08 16:25

『あなた、ちょっと動きが甘いんじゃない?足のステップ合わせなさい』

「はい、すみません。直してきます。」



練習生の頃、日本人で女の子という珍しさからまだ小さかった事務所ではヌナは話題になっていた。ダンスの先生達もあの子は何かある、と期待していた。その分、厳しく細かく注意されていたヌナを思い出す。

僕は横で、いじけたりすることなく素直に言われた事を吸収するヌナを、凄いなと眺めていた。




『テヒョンくん、ここどうやるの?』

🐿「すこし腰を下げるといいかも」

『アラッソ〜』




他の練習生は友達に聞いたり、一緒に練習している中、ヌナは一人ずっと鏡と向き合っていた。最初は一人が好きなのかと思っていた。だけど僕が友達と一緒にやっていれば、ヌナはすごく悲しそうな目で見ているんだ。




🐿「ヌナ、ここ、難しいので一緒にやってくれませんか?」

「ぇ……?いいの?」

🐿「はい。ヌナは踊りに癖がなくて綺麗なので、教えてください。」

「うん、やろう、!」




きっとヌナは日本人だから、とか女だから、って色々気にして輪に入れなかったと思う。まだおぼつかない言葉で伝わりにくかったけどゆっくりヌナの話を聞いてあげた。




「テヒョニのおかげ!」

🐿「ヌナが努力したからです。努力も実力のうちですよ。」

「ふふ、ありがとう」





ヌナから感謝されることが好きだった。「テヒョニのおかげだよ」って言われるのが凄く誇らしかった。ヌナは人にちゃんと感謝を伝えられたり、ちょっと恥ずかしいことも言えるような人だから素直に伝えられるのが嬉しかった。

もっとこのヌナのために頑張ってあげたい。





「テヒョニはヌナのソウルメイトだよ〜」


🐿「それはヨンジュニヒョンとかに妬まれちゃうかもしれないですね」


「テヒョナはいちばんに声掛けてくれた子だもん、嬉しかったなぁ」


🐿「きっとどんな出会い方でもヌナとは一緒に居た気がします」


「運命ってこと?」


🐿「ふふ、まぁそんな感じです」








ヌナのお友達第1号は僕で、きっとヌナをいちばんに理解しているのも僕だよ。

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