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第14話

【番外編】水族館デート3
280
2021/07/04 02:51
水族館の中には、青く透明な世界が広がっていた。
あなた
わぁ、綺麗···
冨岡義勇
あぁ、綺麗だな···
水瀬も俺も、感嘆の声をあげる。
でも、きっと、意味は違う。
水瀬の「綺麗」は、
おそらく水族館の魚たちに対する「綺麗」だろう。
だが、俺の「綺麗」は水瀬を含めて、
いや、むしろ水瀬を主体にしての「綺麗」だ。
それほどまでに、水瀬は綺麗だった。
楽しそうな横顔が、キラキラした瞳が、
紅潮した頬が、綺麗だ。
冨岡義勇
綺麗だな。
俺はまた、そう零す。
あなた
本当に、綺麗だねぇ。
冨岡義勇
水瀬が。
あなた
え?
俺がそう言うと、水瀬の顔は真っ赤に染まる。
冨岡義勇
可愛いな。
あなた
ちょ、あの、冨岡くん?
どうしてだろう。言葉が、勝手に出てくる。
そんな時、アナウンスが流れる。
アナウンス
只今より、
イルカショーが始まります。
イルカショー···。楽しそうだな。
冨岡義勇
水瀬、
イルカショーを見に行かないか?
俺が誘うと、水瀬は少し安心したように、笑った。
あなた
そ、そうだね、行こう!
しかし、まだ動揺は抜けきっていないようだ。

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そのイルカショーは、一言でいえば大迫力だった。
涼し気というには、
少し多すぎる量の水飛沫が観客席を襲う。
あなた
わぁ、凄い、ね?
水瀬が呆然と呟く。
冨岡義勇
あぁ、凄いな···。
水瀬、大丈夫か?
濡れていないか?
俺は、ビニールシートで水飛沫を防ぎつつ尋ねる。
あなた
うん、大丈夫だよ。
それより冨岡くん、腕疲れない?
そろそろ変わろうか?
水瀬はどこまでも優しいな。
しかし、俺にも男としての意地がある。
冨岡義勇
いや、大丈夫だ。
水瀬のことは俺が守る。
俺が言い切ると、水瀬は顔を真っ赤にして言った。
あなた
と、冨岡くん、
あの、周囲の目が···。
その言葉に、俺は周囲を見回す。
すると、あちこちにニヤニヤとした顔があった。
俺たちは揃って赤面した。

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楽しい1日は、あっという間に過ぎていった。
水族館の外は日が傾き、
オレンジ色の世界となっていた。
あなた
1日がもっと長ければ良いのに···
なんてね。
帰り道、水瀬がそう零した。
冨岡義勇
そうだな···
そういえば、
いつの間にか普通に話せるようになったな。
目標達成だ。
それを嬉しく思いつつ、俺は答える。
そして、ポケットの中を探る。
目的の物を見つけた俺は、水瀬にそっと手渡す。
あなた
!?
冨岡くん、これ···
その小箱に水瀬は驚く。
冨岡義勇
俺からのプレゼントだ。
今、開けてくれないか?
あなた
う、うん。
そう言って水瀬は小箱を開ける。
あなた
わぁ、可愛い···
その中には、イルカのペンダントがあった。
水瀬に似合うだろうと思い、買った物だ。
冨岡義勇
実はそれ、ペアになっているんだ。
また、こいつらを、その、
会わせてやりたいの、だが···
喜ぶ水瀬に、俺のペンダントも見せる。
要するに、次のデートの誘いだ。
···説明しているうちに、
なんだか恥ずかしくなってきた。
あなた
っそう、だね。
また、会わせてあげようね。
水瀬が顔を紅くする。
夕日の中でも、それが霞むことはなかった。

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