第6話

不安
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2026/08/23 03:09 更新
…あれは、反則だ。

あの時、聞かれていたことと、なぜ名前を知っているのかを不思議に思う。
たぶんだが逢沢先輩が呼んだ時にまだいたのか。


それでも、推しに名前を呼ばれるというこれ以上にないご褒美を不意打ちでもらう。
うれしくないことがなかった。



……明日、死ぬんか...


少しの間思考が止まる。
それでも休憩時間の終わりが迫ってきていることを思い出し、あわてて席に戻った。



仕事が終わり、今日はどこにも寄らずに会社を出る。
「は」といっても、いつも寄ってはいないが。

昨日見かけた、気になった店を訪れる。

会社からそこまで遠くはないが近くもない。
だれかと鉢合わせることもないだろう。

少し気が抜ける。

案内された席に座り、メニューを開いた。



ピンポーン
店員さん
はい、ご注文は
あなた
ハイボールと枝豆とからあげで
店員さん
かしこまりました。
注文をしメニューを片付ける。

カバンからスマホを取り出し、料理が来るまでSNSを眺めた。
そんなに友達が多いわけもなく、通知はゼロ件。
くるとしても公式から。そんな私に一件の通知。

見ると、昨日飲み会で交換した坂本だった。


坂本 遼
暇?
なにかしらのお誘いだろうか。
あなた
今、居酒屋。
坂本 遼
どこ?
坂本 遼
行っていい?
あなた
うん
あなた
○○ってとこ
坂本 遼
おk
淡々としたメール。そしてしれっとサシ飲みすることに。

展開がはやいなーと思いながら、来たメニューに目をやる。
店員さん
ハイボールと枝豆とからあげです
注文は以上でしょうか
あなた
はい
来たハイボールを一気にのどに流し込む。
あなた
...ッカァ…!
声にならない感嘆の声。のどが程よく厚くなっていくのがわかる。
一人飲みも悪くないなと思った。

最初に来たハイボールを半分くらい飲んだ頃に坂本がやってくる。


あなた
あ~坂本~!
こっち~
気のゆるみすぎか、少し頭がふわふわする。
治さねばな。
坂本 遼
えっと、、、もう出来上がった感じ?
あなた
いーやまだまだこれから
坂本 遼
大丈夫?まだ酔ってない?
あなた
へーきへーき
今夜は飲むぞ~!!
坂本 遼
昼食ってないんだからほどほどにしなよ…
あなた
あ~い



あれから一時間くらいか、言われた通りほどほどに飲んでいる。

だが愚痴や話は止まらない。


あなた
はあああ
坂本 遼
今度はどうした?
あなた
んー…なんか、最近幻覚みるようになってきてさ…
推しが尊すぎて困ってるんだよね……
坂本 遼
推し?
あなた
ん…推し。
坂本 遼
どんな幻覚見るの?
あなた
さっきは私の苗字を呼ぶ幻覚、、、言ったことなかったんだけど
あなた
…あと、呼ばれる前に笑顔にやられてしまったな……
坂本 遼
重症かな…笑
あなた
うるさい、、、けど、間違っちゃないんだよね…
坂本 遼
それは会社にいる人なの?
あなた
まぁ、いるとは思うけど、、、会えるような人じゃないし。
坂本 遼
わからんかもよ?もしかしたら幻覚じゃなかったり
あなた
それは心臓に悪い、、、と言いますかねぇ…
坂本 遼
なんでだよ笑推しが近くにいたら幸せなんじゃないの?
あなた
…そう、考えられたらどれほどにいいか
坂本 遼
と言うと?
あなた
同じ空間にいられて会話さえもできてしまうのは嬉しいことだけど、それと同時に、自分なんかと話してていいんですか、って思っちゃって。
ただでさえ手の届かないような人だから。
……釣り合わないんじゃないかって。
坂本 遼
それは相手が決めることじゃないと思うけど。
いいんじゃない?
自分が話してて楽しいなら。
相手が自分と喋って笑ったりしていたら。
坂本 遼
それは、紛れもなくあなたの名字と喋るのが楽しいからなんじゃないかな
あなた
…ッ!そう、なのかな…
坂本 遼
まぁ、俺が決めるもんでもないけどな笑
なにかぐるぐると回っていた黒いものが引いていったような気がした。

今までは無駄なことを考えていたのだろうか。
それでも不思議とみじめに感じることはなかった。

それまでの考えも、教えてくれた考えも、どちらも正しいかどうか判断が出来なくて。


私は坂本に感謝した。
あなた
なんか、ありがとね
坂本 遼
いいってことよ
彼が笑うと少し、空気が晴れたような気がした。
あなた
なんか、誘ってくれて?ありがとう!
坂本 遼
それは、あってんのかな笑
また、しょうもないことで笑いあう。


もう一時間が、あっという間に過ぎていった。

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