第75話「空に届きそうな場所で」の続きです。
投稿時間が空いたので、そちらを読んでから
この本編を読むことをおすすめします!
彰人くんと司くんは、私の言葉を復唱しながらも
どこか腑に落ちていないようだった。
類くんの方を向くと、目が合った。
すると類くんは微笑んで、
思いもよらぬ一言を私へ投げかけた。
場の空気が一転した瞬間を肌で直接感じる。
焦燥と期待の入り交じる司くんの声が響く。
こちらは完全に焦っている様子の彰人くんに対して、
類くんは遠くを見つめてそう零すだけだった。
その表情は儚くて、どこか寂しげだった。
類くんを除く3人の、息を呑む音がした。
類くんの諦めた視線と
司くんの一縷の望みにかけている視線、
彰人くんの驚きを隠せない視線…そして、
冬弥くんの、真剣な視線。
4色の視線が私に集中していた。
口が勝手に動く。
そして、つられるように身体も動いた。
目線を下にしたまま、
ゆっくりとある人の方へ歩く。
顔を上げると、
冬弥くんの顔には意外だと書いてある。
4人はただ黙って私の言葉に耳を傾けてくれた。
手にぎゅっと力が入る。
どこまでも曖昧な自分に嫌気がさす。
言葉に詰まる。
何を言ったらいいの?
ほらまた、喉に何かがつかえる感覚。
泣く予兆。
やだよ、私、強くなったって…
絞り出した声は涙声で、
これ以上は何も言えなかった。
ギュ
ふと視界が暗くなる。
少し考えて、ようやく理解した。
私…今、抱きしめられているんだ。
冬弥くんに、しかも真正面から。
温かくて優しいその声が、私の心を落ち着かせる。
パチパチパチパチ
軽快なクラップ音が聞こえた。
冬弥くんの腕の中で音の鳴る方を見ると、
類くんが拍手しながらそう言った。
司くんも、類くんにつられてか拍手してくれる。
彰人くんは何も言わない。
冬弥くんに名前を呼ばれると鼓動が速くなる。
それは少し前からのことだったけど、
今は状況的にも余計にそうなってる気がする。
私の背中に回っていた手がゆっくり離れ、
冬弥くんと向かい合う。
もう一度、拍手が響いた。
今度は、彰人くんも笑っていた。
今はまだ確信が持てないこの気持ちだけど、
いつかこれは恋だって、
胸を張って言えるようになりたいな。
3人に頭を下げる。
信じられないくらい、嬉しかった。
もう一度、冬弥くんの方を向く。
文法的におかしな日本語だということくらい、
私にも分かっている。
それでも、今の私の想いを伝えるには
この言葉がいちばん届く。
…かっこいいな。
いつしか私は、自然と笑えるようになっていた。













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。