紡いだ想いの行く先は
一緒がいいに決まってる
貴方を想って鳴く胸の音は
幸せの音であって欲しい
繋がれた手を見てくすぐったい気持ちになる。
ひた隠しにしていた想いが開放され、素直になれる喜びと、本当にこの幸せが本物だろうかと未だに疑い、躊躇う宮舘の心。
手のひらに落とされたのは桜の花びら。
思わず顔が熱くなる。
こんなささやかな事で、こんなにも幸せに感じるなんて…
飛んでいかないように、潰れないように…
宮舘はそっと花びらを包んだ。
見上げれば桜が美しく、
隣を見れば穏やかな表情の渡辺。
春の夜風はまだまだ冷たいが、繋いだ手の温度がそれを感じさせない。
はにかみながら宮舘はもう一度、言葉を発した。
その瞬間、やわらかい風が2人の間を通り抜けた。
トクンッ…
満開の桜と笑顔の宮舘を見つめると鼓動が高鳴った。
花が咲いたような笑顔って。
多分こういう顔のことなんかな…?
知っているようで知らなかった表情。
月明かりと桜のライトアップで普段の雰囲気とは違う宮舘を改めて見た気がした渡辺であった…
思わず頬に触れると不思議そうな顔する。
なんで今まで気づかなかったんだろう…
無自覚だった自分の過去に戻れるなら今すぐ戻りたいと願う渡辺であった…
トクンッ…
再胸が高鳴った。
痛くて甘い感覚。
トクンッ…
あー…これはグッと来るわ…
思わず渡辺は宮舘の腰に手を回して自分の方へ引き寄せた。
昂る気持ちが引くまで…
渡辺がポスっと肩に頭をくっつけると、宮舘は無言で背中に手を回した。
何年、自覚して君に恋してると思ってんの?
宮舘は表情の見えない恋人にクスクス笑いながら背中越しに咲く桜を堪能することにした。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!