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第30話

人でなくなること
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2025/06/29 02:39 更新
KOJI,M

 全ての始まりだったラウとの出会い。あの時ラウールは言った。

「大切な人との思い出を忘れようとしちゃだめだよ」

 と。

 あのことが、発端やったんか。

 俺がめめを忘れようとして、俺が写真を撮るのをやめて……めめは俺を見失った。

 その時から、じりじりと、今日のこの日のシナリオが作られていってたんか……。

 なら、尚更……全部、俺のせいやんか。


「いらんなんて、思ったことない……。めめのことは大事な友達や。やから、返してもらわなあかん。あんたみたいなやつにはあげられへん」
「ナンデ……コイツ、ステラレタ……ゼンブ、カラッポ」
「空っぽなんかやない! めめは、もっと複雑で、もっと繊細で、もっと……強い人や」

 全部から目をそらしてたんは俺や。めめが死んで、一年間も前に進まんかった。足を踏み出そうともせず、全部投げ出したんは俺や。

「めめを失いたくなかったんやない。俺が、俺を捨てようとして……それで」
「康二!」
「落ち着け! 惑わされるな。……こいつはこの世ならざるもの。俺達は直接手は下せない」

 人間である俺やないと、こいつを裁くことはできへんらしい。全く、何もかも最悪や。……でも、人間は、欲深いからこそ成し遂げることができるんやんね?

「俺はめめも皆も救う! 俺はどうなっても、生きてる命やからできることをする!」

 とは言ったものの、どうしろと言うんやろ。こんなんを退治する方法なんて知らんのに……。

 そう必死に頭を動かしてると、突然蔦が緩んで神とやらはギャァっ! と耳が痛くなるような叫び声をあげた。

「全く、康二は一人で犠牲になろうとするね」
「あ……阿部ちゃん……」

 白猫と共に奴の蔦の上にフワリと立って現れたのは……いつにも増して笑顔の、怖い笑みを浮かべた阿部ちゃんやった。
 阿部ちゃんが歩みを進める度に、阿部ちゃんが歩いた箇所がぼろぼろと崩れていく。それは相当な痛みを伴うらしくギャアギャアとソレは声をあげている。

「だめじゃない。この子はもう俺のものなの。わかる?」
「……あ、べちゃん?」
「それを横取りするなんて、よくないと思わない? ねぇ、朔舞」
「にゃあ」
「この半端者が」

 聞いたこともないような低い声で、阿部ちゃんはそいつを蹴飛ばした。
 ……うっそん。めっちゃ強い……。

 さっくんは俺を優しく地上に降ろし、俺の肩に乗る。

「康二、ほらあのペンダントを出して」
「え、あ、うん」

 オレンジ色にゆらゆら光るペンダントを見せると、それがなんなのか理解したらしいふっかさんと舘さんは頭を抱え、しょっぴーは呆れたような声を出した。

「これが証明。ね? 諦めた? この子と、この守護霊はすでに俺の贄になることが決まってるんだよ」
「え、贄!?」
「だからお前みたいな半端者にはあげられない。……さっさと自らの郷へと帰れ。二度と俺の獲物に手を出すな」

 ドスの利いたこわぁい声で、阿部ちゃんはそいつに言い、アイツは尻尾を巻いて逃げてった。……阿部ちゃんって、こんな強かったんか。

 神は敵に回してはならないと改めて思った瞬間。

 その場に残されためめに俺はすぐに駆け寄る。

「……めめ、めめ!」
「……」
「めめ!」
「……大丈夫だ。眠ってるだけだ。……俺達に死ぬっていう概念はないから」
「……そっか。起きるよね?」
「起きる。絶対」

 俺が安堵していると、阿部ちゃんがいつもの優しい笑みで俺に歩み寄る。

「康二、さっき言ったことだけど」
「これ……阿部ちゃんの贄になる契約するもんやったんか」
「そうだね……。なんにでも代償は必要になる。でも、今すぐってわけじゃない」
「……阿部ちゃん、俺はいいよ。人でなくなることが辛いことでも、俺が死んでしまった時に皆と一緒にいられへんのはそっちの方が嫌やから」

 そう言うと、阿部ちゃんも、他の皆も驚いたように目を瞬かせた。

「……俺は、寂しがり屋やから。みんなと一緒にいることを、選んでええかな?」
「……いいのか? 辛く、悲しいことでも?」
「一人になる方が、俺にとっては辛い」

 俺は欲深いからさ。一人で黄泉の国で暮らすより、阿部ちゃんの贄になるのもありやし、皆といられる方を選ぶ。

「……めめは、どうなる?」
「……照、いいんじゃない?」
「阿部は?」
「……俺は……康二。俺の贄になって、俺の傍にいてくれるの?」

 遠慮がちに言う阿部ちゃん。阿部ちゃんは、ずっと"誰か"の存在が欲しかったんよね。

「阿部ちゃんだけやなくて、みんなの傍におりたい」

 欲深く、そして俺の思うがままに。


REN,M
 なんか、俺を包みこんでいた黒い闇がすっきり晴れたような感覚がする。
 外からきゃっきゃっと騒がしい、でも心地の良い声が聞こえる。

 重たい瞼をあけると、そこは見慣れた天井。

「わっ、待って、やっぱり怖いって!!!」
「あっははは! そのうち慣れるって!」
「怖いぃぃぃぃぃ!」

 外を見ると……。

「は?」

 思いも寄らない光景が広がっていた。

 ここは知ってる。俺がよく知っている場所。ここは地上の楽園。それに間違いはないはず。

「お、目が覚めたみたいだね。目黒」
「……舘さん、えっとこれは」
「安心しろ! めめ、お前の人生は無事修復が終わった! らしい」

 意気揚々と影から出てくるしょっぴー。ずっと俺のこと見ててくれてたんだね。

「ほんと、康二は……なにをするかわからないね。でも、それで沢山の人が救われるんだね」

 眩しいようなものを見るような目。そうだ。康二はいつだって、皆の心に光を灯す。

「自分は写真を撮る側だからいいんだってさ」
「……綺麗、だね」

 出てきた感想は、そんな薄っぺらい、でも深い感情。

 康二は、前のような曇った顔なんかじゃない。なんか、不謹慎だし言うのも憚れるかもしれないけど、死んで良かったね、なんて。

「めめ! めめも犬の姿になって飛ぼうよ!」

 俺の手をラウールが引っ張って、ふっかさんから特訓を受ける康二が白い羽根を太陽の光に反射させて美しく舞う。

 不格好だけど、この世で最も眩しい光のように感じた。
皆様、ここまで読んでいただき、ありがとうございました🙏
これにて、アンサーオブメモリーズは完結です✨
途中からなかなか投稿できず不定期になってしまいましたが……楽しんでいただけたら幸いです🙇‍♀️

次の新作はですね、💛💜のおふたり主人公の異世界ファンタジー、そして恋愛ものです!是非遊びに来ていただけたら幸いです🍀

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