カウンターに座る私達の前に出てきたのは
3つずつ置かれたおにぎり。
口いっぱいにして はい そう言いたかったんだろうな。
言えなくて
ふぁい
になってる裕太さん。
ん ~ 、かわいい…
さっ、私も食べよう。
3つ並ぶおにぎりの左から食べていく。
口の中で広がる辛味。
トン、と出てきた水。
ごくごくと染み渡る冷たい水。
辛味で染まった口の中を潤してくれる。
にやにやしながらいう店長。
悪気でしかないでしょ!
その笑み!
と、お皿を洗い出した。
ところで裕太さんは…と
え?
動画を撮るのをやめた裕太さん。
黙々とおにぎりにかぶりつく。
可愛い。
これこそ、私も撮りたい…
いいよね、撮っても…
こっそ ~ り、携帯を出して裕太さんにむける。
そしたら、過去最高な幸せそうな笑みを出してくれて
今だっ!
勢いよくシャッターを押した。
すっごいいいの撮れた…と思う。
あの笑顔反則だよ ~ …
フォルダを見返すと裕太さんと思われる感じは
押さなくても分かるんだけど
いざ、押してみると
顔がハッキリとぶれててこれじゃ眺めるにもブレが邪魔で
話になんない!
机に携帯を置いて肘をついてた。
隣から覗き込む裕太さんの顔が近くて
つい、腰を後ろに引いた。
…ちょっと裕太さん?
と、思うところはあったけど実際そうだし…
何も言わない。
裕太さんが近くにいてくれるみたいで
勉強も頑張れる気がするから。
私の携帯を持って
顔がすぐ横にある距離でシャッターの音が鳴った。
そんなドキドキは一瞬で
すぐ離れてしまった裕太さん。
その後ろ姿を見るだけ…
けど…嬉しい。
そこには私の大好きな裕太さんの笑顔と映る私。
私の顔は置いておいて真っ先に見つめた裕太さん。
やば、、家宝並み。
ん。
と、渡してくれた私の携帯。
何度も何度も見てたら
照れだし、私の携帯の画面を手で隠した。
こんなの家宝だよ。
この携帯絶対落とせないな。
それって…
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。