第9話

6.真実
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2024/06/27 13:50
看守庁本部の施設の中で、天鬼とタノシミがモニターの様子を見ていた。
タノシミ
お疲れさま。みんな…。
タノシミがモニターを見ながらつぶやくと、手元にあるタブレットを操作しながらつぶやいた。
タノシミ
ミラージュシュミレーション、解除っと。
タブレットを操作した後、その場にある椅子に座らされ、頭に何らかの装置を取り付けられているジュンとホスト、リヒトとバーボン、ミナト、マサら10人の少年たちが目を開けた。10人は頭に取り付けられている装置を外しながら立ち上がり、横に5人ずつ2列に並んだ。
天鬼
私はここ、看守庁本部の本部長、天鬼だ。
お前たちには、事前の通知なしでこの訓練に参加してもらった。
先入観を捨ててもらうために、ここについた後、睡眠導入剤で眠らせてね。
天鬼が説明を終えると、ジュンがはっとしたように言った。
ジュン
そうか!だからあの時、急に意識が…。
どうやら、彼らは事前に看守庁本部に着いた後、先に来ていたタノシミに用意されたコーヒーを飲んだ後、急に意識を失ってしまい、眠っている間に先程の装置を頭に取り付けられ、訓練に参加されていたようだ。
リヒト
じゃあ、寝てる間にあの装置をつけられて架空の世界へ…?
タノシミ
そういうこと。
リヒトの説明に、タノシミが答えた。
タノシミ
五感の全てと、第六感にも作用させられ、システムを開発したんだ。
僕もそうだけど、君たちのような収監者が、
もし命がけで戦うことになったら、ということを考えて作られた、
バーチャルシステムだ。
タノシミが詳しく説明をする。
マサ
訓練って何ですか…?
マサが震えるような声で訊いた。
マサ
俺たち、何度も何度も殺されて…!
天鬼
特殊任務のためのセレクトだ。
天鬼が厳しくピシャリと言った。
天鬼
その特殊任務とは、
お前たちがバーチャルワールドで戦ったこの怪物…
天鬼がモニターを指さして言った。一同の視線がモニターへと向けられる。
天鬼
ベルバイルの党閥。
そのモニターには、先ほどまで一同が戦っていた怪人の姿が映っていた。
ホスト
ベルバイル…?あの怪物、実在するんですか⁉
ホストが食い入るように天鬼に質問した。
天鬼
うむ。ベルバイルはメテオダークネスという、
復讐大根会社によって作られた戦闘用アンドロイドだ。
その実態は、殺人未遂を続けるロボ。
愚かな人間どもは、どんな奴であろうとも、
必ず地獄へ落とす…それが奴の実態だ。
天鬼は話を区切ると、深呼吸をしてまた話し始めた。
天鬼
我々の調べによれば、ベルバイルは
幻視空間に潜む、言えば獣のような存在だ。
2週間ほど前、ここの副官であるナーガ副官が
その幻視空間に潜入し、命を懸けて奴を確保した。
ところが、ここの地下にある刑務所に収監した後、
突然奴は何かをした。
そして、奴の攻撃により、ナーガ副官以外の人間が、全員殺されてしまった。
天鬼の説明を聞いていた一同は、絶句した。天鬼が話を続ける。
天鬼
ベルバイルはどこにでもいる人間を操り、その場に
いた人間を全員殺した後、その人間も殺してしまうという、
意外な能力を持っている。
リヒト
噓…
リヒトは茫然となった。その時、
天鬼
ヒーッヒッヒッヒッヒヒヒヒヒ…
突然、天鬼が高い笑い声をあげたので、一同は後ずさった。
タノシミ
気にしないで。あれはただのしゃっくりだから…
ホスト
どんなしゃっくりだよ…
タノシミの説明に、ホストがツッコむ。
天鬼
失礼。
天鬼が軽く謝礼を言うと、再び説明を始めた。
天鬼
そして、残された副官は、被害の拡大を懸念して、
奴を捕らえるために、内側のロックを施錠し、解除システムを破壊した。
通信も一切途絶え、そして今に至る。
ジュン
じゃあ、その副官は、ベルバイルと2人きりってこと⁉
天鬼
ああ。
ジュンの問いに、天鬼が答える。
天鬼
そしてもう1つの任務が、ナーガ副官の救出だ。
タノシミ
じゃあ、一刻も早く突入しないと…。
タノシミがつぶやいた。天鬼がモニターを見ながら説明を続ける。
天鬼
その現場は、お前たちが閉じ込められたバーチャルワールドと全く同じ構造だ。
つまり、もうすでに準備が整っている。
改めて任務のメンバーを発表する。
天鬼の言葉に、一同は姿勢を正した。
天鬼
バーボン、リヒト、そして、ミナト。以上の3名が、この任務に向かうことになった。
爪と触手に対抗するには、お前たちの体力が必要だ。
リヒト
はい。(同時)
バーボン
はい。(同時)
ミナト
はい。(同時)
3人は返事をした。
天鬼
3人は、任務に備えて休息を、後のものは、刑務所に戻り、
十分な休息をとること。一応それぞれの看守長にも、それは伝えている。
以上、解散!
天鬼が指示を出すと、一同はバラバラになった。ふと、ジュンはホストが何かを考えていることに気づいた。
ホスト
触手と爪…
ホストの小さなつぶやきに、ジュンは首をかしげた。

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