…目覚めたかァ?
え…。
目が覚めると、太宰さんや乱歩さんはいなかった。
その代わり、全然知らない人たちに囲まれていた。
あの…ここは、どこですか?
あなたたちは誰ですか…?
手前、そんなことも知らねェのか。
ここは“ポートマフィア”だよ。
ポート、マフィア…
こちらも、風の噂で聞いたことがある。
横浜を縄張りとしている犯罪組織…だとか何とか。
って、何で私ここにいるんですか!?
武装探偵社にいたはずなんですが…っ
武装探偵社?
貴様をあそこへ帰すつもりはない。
なぜ太宰さんは僕を認めず、貴様や人虎を認めているのか。
貴様もあの人虎と同じ部類の人間だ。
は…?人虎…?
それに、認めるって…?
おや、起きたかい。
改めて紹介しよう。
ここはポートマフィア。そして私は首領の森鴎外だ。
可愛いお嬢さん、よろしく。
は、はぁ…。
そして私の妻、エリスちゃんだ。
キモいわ、リンタロウ!
もう、そんなこと言わないでおくれよ、エリスちゃん!
あのー…でも何で私はここにいるんでしょうか。
あ?お前、覚えてねぇのか?
都合よくお前が出しゃばったから俺がここへ運んできたんだよ。
鼻の上に絆創膏を貼った人…。
探偵社に乗り込んできた人の1人だ。
…とりあえず、名乗ってくれたまえ。
しばらく君はここで預かるから。
私は…あなたの名字あなたといいます。
でも、何でここにいなきゃいけないんですか。
貴様は太宰さんと一緒にいていい人間ではない。だから僕が貴様をここまで連れてきてくるよう黒蜥蜴に命じた。
やばい。今度はここで暮らさざるを得ないようだ。
私は怖くなったが、太宰さんたちに二度と会えない方がもっと怖かったので、抵抗はしなかった。
おや、起きたのかえ?
芥川から聞いておる。今日からここで暮らすんじゃな。
あ、まぁ…
…あなたです。よろしくお願いします…
私は尾崎紅葉。姐さんでいい。
仲良くしてほしいのじゃ。
尾崎紅葉さん───姐さんは、私に手を差し伸べた。
私は恐る恐る、その手を握り返した。
(綺麗な人だな…。)
怖がらなくていい。我々は其方に危害を加えるようなことはしない。
…本当ですか?
もちろん。約束じゃ。
姐さんのその言葉に、私は少しほっとした。
姐さん、いくらなんでも此奴に甘すぎやしませんか?
探偵社に住み込んでいた人間ですよ?
何か悪いかえ?
ほら、見るのじゃ中也。彼女は鏡花によく似ておる。
!?
鏡花…ってもしかして…
そう、泉鏡花だ。
彼奴は、手前が探偵社に来るずっと前、ポートマフィアにいたんだ。
え…?あの鏡花ちゃんが…!?
鏡花は姐さんに可愛がられてたんだ。
だから手前に好意的なんだろうな。
だがな!俺は姐さんのように優しくはしねェぞ。それだけは覚悟しておけ。
僕も貴様と友好的な関係を築く心算はないからな。
太宰さんと馴れ馴れしく喋るな。
(芥川さんは何でそんなに、太宰さんに執着するんだろう…。)
アタシは(なまえ:カタカナ)と仲良くしたいわ!
リンタロウと違って、ワガママ聞いてくれそうだもの!
いや私が一番エリスちゃんのワガママ聞いてるんだけどね!?
あ、はは…
私は、恐ろしすぎて乾いた笑い声しか出なかった。
これからうまくやっていけるのだろうか…
(なまえ:カタカナ)来て!一緒におやつ食べましょ!
え〜、エリスちゃんもあなたの名字くんも、おやつタイムじゃなくてこれ着てよ♡
着ません!
着ないわ!
…嫌なくらいハモったねぇ。
どうも璃帆です。
ここに来てからというもの、首領の森鴎外さんが変な無茶振りばかりしてくるようになりました☆
変な無茶振りとは何だい…
今はおやつの時間なの!
リンタロウは邪魔しないでっ
そんな冷たくしなくてもいいじゃないか。私も一緒におやつ食べたいし、この可愛いお洋服も着てほしいのだよ。
首領、来てもらってもいいですか。
あ、じゃあ私は行くね。
その間にこれ着ててくれたら嬉s
絶対着ない
(エリスちゃん、断固拒否…)
このケーキ、めっちゃ美味しい!
でしょう?アタシが一番好きなケーキなのよ。喜んでくれてよかったわ。
…ねぇ、(なまえ:カタカナ)。
ん?
(なまえ:カタカナ)は、ここにいて辛くない?
楽しいかしら?
え?楽しいよ。
最初はマフィア=敵っていうイメージで怖かったけど、意外と情に厚くて仲間思いな人もいて安心したかな。
そうなのね!
アタシ嬉しいわ!(なまえ:カタカナ)がここで暮らすことに不安を感じてたら嫌だもの!
エリスちゃん…
着てくれてるかn…じゃなくて、あなたの名字くんにあの話をしないとな〜。
(わざとらしい…)
着てるわけないでしょ!
今、(なまえ:カタカナ)と結構深刻な話してたところなんだから、空気壊さないでよっ!
冷たすぎない〜?泣いちゃうよ。
…さて本題だが、あなたの名字くん、少し来てくれたまえ。大事な話がある。
…?
あなたの名字くん、君にはポートマフィアで暮らしてもらおうと思う。
それは、覚悟してました。
しばらくここで暮らすことになると。
それが違うのだよ。
手前には、未来永劫ここで暮らしてもらう。拒否権はねぇ。
中也さん…?
え…?どういうことですか?
本当はしばらく預かるつもりだったが、手前は探偵社にいた人間だ。
探偵社に帰してポートマフィアの情報を漏らされたら元も子もねェからな。
そ…そんな…
ポートマフィアは秘密主義だから、情報を漏らされたら大変なのだよ。
じゃ…じゃあ、二度と太宰さんたちには会えないってことですか?
いや、そんなことはねぇ。
いつか会えるさ。
いつ?どこで会えますか?
ポートマフィアに来て、いい人もたくさんいるんだなと思ったけど、探偵社の人たちのことも大好きなんです…
いつか必ず、会わせてくださいね。
あぁ。約束だ。
中也さんはそのまま、部屋から出ていった。
楽しみにしてろよ、あなた。
いつか戦場で探偵社に会えるのを。
その頃、私は探偵社で何が行われているのか、知る由もなかった。
あなたちゃん…。
何かされてないかな…。
全く敦は何悲しそうにしてるんだよ。
虚弱体質なのに体調も気にせずあの場に飛び出した挙げ句、倒れて連れて行かれたというのに。自業自得さ。
揉めごとを止めようとした姿勢だけはよかったんだけどねェ。
貧血の症状が出なければ、違う未来があったかもしれないね。
あなた…。無事かな…。
体調崩して倒れたりしてないかな…。
皆、落ち着け。
あなたは必ず助けに行くから安心しろ。
これから作戦会議を始め───
プルルルル…プルルルル…
ポートマフィア…?
失礼、私が出る。
もしもし、福沢殿。
森医師。探偵社に何の用だ。
あなたは無事か。
あなたの名字くんは元気さ。
彼女はポートマフィアで預かることにしたのだよ。
探偵社に帰すつもりはない。
だが特別に、彼女の声を聞かせよう。
社長…!声を聞けて嬉しいです…!!
あなた、無事か。ケガはしていないか?
元気です。
あの、わ、私…ポートマフィアの情報を探偵社に漏らされたら困るという理由で…帰れないかもなんです。
ああ、森医師から聞いている。
危害を加えられたりはしていないか。
…はい。何もされてないです。
そうか。あなたのことは探偵社が守ると誓ったからには、必ず助けに行く。
待っていろ。
そろそろいいかい?
あなたの名字くんを助けたいという気持ちは素晴らしい。これからどんな戦いになるか、楽しみだ。
ツー…ツー…
あの…何だったんでしょうか。
あなたはマフィアが預かるとのことだ。
しかし大切な仲間がさらわれたからには、助けに行く以外の選択肢はない。
必ず助けよう。
ぼ、僕は行かないよ!
あなたは、自分から飛び出していったんだよ。そんなの自業自得────
乱歩、私は知っているぞ。
…?
お前は、探偵社とあなたの運命を、全て知っているんだろう?
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。