ノエルは大学の講義を聞いている途中、シャーペンを回してため息を漏らした。
昨日も同じことを聞いた気がする。後ろから2番目の階段教室で、全員の顔を見渡す。
熱心にノートを執るものもいれば、スマホをいじって遊んでいるものまで千差万別だ。
どいつもこいつも馬鹿ばっかりだ。
共通項はそこだけだった。
静かに席を立ち、そのまま教室を出た。
学費は払っている。でもそれだって経歴のためだった。
つまらない時間に拘束されていいこぶるのは疲れる。
と、そのときだった。
目の前にあったのはトラックだった。
足が動かない。取り憑かれたようにこちらに進んでくるトラックが、西日に照らされ眩しい。
ああ、死ぬのか?
気づけば、目の前は真っ赤に染まっていた。
「これも運命なのよ」
と、聞こえた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!