僕の部屋で映画を観終わり、あなたが帰ろうとした時。
珍しく咳が出た。
コートを羽織るあなたの腕を掴んでソファに座らせる。
そのままぎゅっと後ろから抱きしめると、困惑した様子が伺えた。
そう言いながらも嫌がりもせず、拒みもせず。
君はいつも僕の言いなりだ
でも、と言ってカーテンの外を気にする君
早く帰らないといけないのはわかってる
それでもどうにか留めておきたくて…
抱きしめる力を強めると、照れて固まった
こんなんで照れちゃうあなたが可愛くて、いつも意地悪したくなるんだ
耳元で囁くと、目の前の可愛い顔が真っ赤になる
そうそう、これが見たかったんだ
暫く抱きしめてると、ついにあなたが口を開いた
わざとらしく顔を覗き込むと、真っ赤なまま眉を下げて困ってる
ちょっと意地悪しすぎたね?
可愛い君の華奢な手を取って立ち上がらせた。
はだけたコートを肩にかけ直してあげる。
置いてあったマフラーをしっかり巻いて、あなたの鼻にチュッとキスをした。
僕もコートを羽織って支度をしたら、手を繋いだまま玄関に向かう。
油断している君の耳に、最後にもう一言だけ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。