第5話

4[音楽室]
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2023/12/23 07:39
一号館と、二号館の間の道を通る。
二号館に並ぶようにしてある三号館の一階。そこに音楽室はあった。
トウカ
ついた、
肩で息をしながら下駄箱に寄りかかる。
トウカ
あ、まって、この曲ってある一部を聞くと呪われるんじゃ、
それに気づいてリカの方を見ると、リカは真顔だった。
リカ
別に、先生にあった時点でもう呪われてるも同然なんだし、構わないでしょ







暗い廊下を突き進む。
ピアノの音は、途中からしなくなっていた。
トウカ
ピアノの音がないと結構不気味だね
音楽室の扉の前に立つ。
鍵は、空いていた。
無言で教室に入る。壁一面に貼られた音楽関連の人物画は不気味さをましており、ピアノの周りには人影一つ、見当たらない。
リカ
やっぱデマだったんじゃない?
トウカ
じゃあさっき聞こえた曲は何!?
リカ
幻聴
ひときわ大きな額縁を眺めていると、そう言われたため、思わず振り返る。
振り返った先に見えるリカは、こちらを凝視していた。こちらを見ているのだが、視線は私の背後だ。
トウカ
…え、何
ふたたび振り返ろうとしたが、顔が動かない。何者かに両頬を掴まれている。
いや、そんなわけ無いだろう。だって、私の背後は、絵画だもの。
両頬に何者かの手の感覚があるまま、上を見上げる。
女が、こちらを覗き込んでいた。視線が合う。
Bonsoir mesdames
異国の言葉で何かを言い、笑みを浮かべる。
混乱していると、女はぐん、と口角を上げて、吹き出した。
ひとしきり声をあげて笑ったかと思えば、私から手を離す。
あっはは、は、ひー笑った笑った
そしてまた、先ほどの静かな笑みを浮かべるのであった。どう言うことか彼女は、額縁から上半身を覗かせているようだ。
そんなに驚いてくれるとは思っていなかったわDamesお嬢さん方
そう言うと、彼女はよいせ、なんて呟き、額縁に肘をついてこちらを見る。
そんなに警戒しないでちょうだい。危害を加えるつもりはないのよ
あらちょっと、びしょ濡れじゃない風邪ひくわよ!
外が雨だったのよね?私、雨嫌いだわ。濡れるもの
ぽんぽん、と話題が変わっていく。今の状況に混乱している私たちでは、その話についていけるはずもなく、身じろぎをするしかない。
トウカ
あの、ちょっと、どう言うことですか?
トウカ
あなたは、誰?
叫ぶようにそう言うと、女は目を瞬いてから、そういえばまだ言ってなかったわねと呟く。
一瞬、女が額縁に手をついたかと思うと、額縁から下半身をのぞかせる。
リカ
どうなってるのそれ!?
絵の中から抜け出せる仕組みになってるわよ。不思議でしょ?
足が床につくと同時に、彼女はカーテシーをして、名乗る。
私こそが七不思議1番目、音楽室のピアニスト、ノア・ドゥ・フォンテーヌよ
ノア
ノアって呼んでちょうだいな
そう言って彼女は、首を傾けて微笑んだ。

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